1次独立と1次従属, 基底と次元

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1. 1次独立と1次従属

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1次独立と1次従属の定義

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1次独立と1次従属は高校数学のベクトルでも学習しました。そのときと同じようにこれらを定義します。

定義|1次独立, 1次従属

体$K$上のベクトル空間$V$のベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が、$c_1, c_2, \dots, c_n$をスカラーとして

\begin{align} &c_1\bm v_1 + c_2\bm v_2 + \dots + c_n\bm v_n = \bm 0\\[0.7em] \implies&c_1 = c_2 = \dots = c_n = 0 \end{align}

を満たすとき、$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$は(体$K$上)1次独立または線形独立(英: linear independence)であるといいます。

逆に1次独立でないとき1次従属または線形従属(英: linear dependence)であるといいます。

中には1次独立を「2つのベクトルが平行でない」、「3つの空間ベクトルが四面体をなす」のように図形的に定義して習った人もいるかもしれませんが、今回は抽象的なベクトルに対しても1次独立が定義できるように数式で表しました。 1次独立についての理解が深まるように具体例をいくつか用意したので、イメージを膨らまるのにご活用ください。

具体例1|平面ベクトル
具体例2|空間ベクトル
具体例3|実数係数多項式
具体例4|$1$と$\sqrt{2}$の1次独立

1次独立の細かい注意点

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1次独立を初めて学ぶ人は飛ばしてもらっても大丈夫ですが、より厳密に理解するためにいくつか注意点をご紹介します。 主な注意点は次の2点です。

1次独立の注意点
  1. $c_1 = c_2 = \dots = c_n = 0$の$0$は体$K$の加法単位元を表す
  2. 1次独立かどうかはベクトルの組だけでなく係数体にも依存するので、あるベクトルの組が一方の体上では1次独立だが、他方の体上では1次従属になるケースもある

それぞれ解説していきます。

1つ目は1次独立に限った話ではなく、線形代数の話全般に言えることですが、スカラーの$0$は体$K$の加法単位元のことを指しています。 加法単位元とはその体において、どの元と足し合わせても相手の値を変えない元のことをいいます。

私たちがよく慣れ親しんでいる実数体$\mathbb{R}$の場合、この加法単位元$0$は文字通り実数の$0$なのですが、 単に数字の$0$のことだと理解するよりもこの$0$は体$K$の加法単位元のことを表しているんだと理解するほうが線形代数の抽象性を実感できると思います。

2つ目は1次独立特有の注意点です。1次独立かどうかと聞かれるとベクトルの組に意識が向きがちですが、係数体によっても変わります。 ただ、基本的にはあるベクトル空間を考えるときに係数体を変えることは少ないですし、大抵の場合は実数体を使うので意外と気が付きません。

しかし、例えば先程紹介した$1$と$\sqrt{2}$はあくまで有理数体上では1次独立ですが、実数体上では1次従属です。 他にも似た例として、$1$と$i$(虚数単位)は実数体上1次独立ですが、複素数体上では1次従属です。1次独立の定義に「(体$K$上)」と書いてあるのはこのためです。

以上2点に注意しましょう。

2. 1次独立・従属に関する命題

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ここからは前回と同じように1次独立・従属に関する基本的な命題を紹介し、証明していきます。 これまたどれも当たり前に感じるものばかりですが、先程の8つの性質だけを前提として議論が進んでいることに注目してください。 証明をすべて読むのが大変な人は命題にだけ目を通して、あとで読み返すのもおすすめです。

以下ではベクトル空間を$V$とします。

1次独立ならば零ベクトルでなく、互いに相異なる

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1つ目の命題は「1次独立なベクトルの組は零ベクトルを含まない」です。 高校数学で2つの平面ベクトルが$\overrightarrow{a}\neq\overrightarrow{0},$ $\overrightarrow{b}\neq\overrightarrow{0},$ $\overrightarrow{a}\nparallel\overrightarrow{b}$であることから1次独立だと書いたことがあるかもしれませんが、 今回は1次独立を幾何学的に定義していないので証明していきます。

命題1|ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次独立ならばそれらはどれも$\bm 0$ではない

背理法で示します。

$\bm v_1 = \bm 0$と仮定します。このとき$c_1 = 1,$ $c_2=\dots=c_n=0$とすると、

\begin{align}&c_1\bm v_1 + c_2\bm v_2 + \dots + c_n\bm v_n\\[0.7em]={}&1\cdot\bm 0 + 0\bm v_2 + \dots + 0\bm v_n\\[0.7em]={}&\bm 0 + \bm 0 + \dots + \bm 0\\[0.7em]={}&\bm 0\end{align}

となり、スカラー$c_1, c_2, \dots, c_n$すべてが$0$というわけではないのに、$\bm 0$になってしまうので1次独立であることに矛盾します。 よって、1次独立ならばどのベクトルも$\bm 0$ではありません。

注1|数式の2行目から3行目は前回の記事より「ベクトル空間の公理と部分空間の命題5および命題6」を利用しています。

注2|$c_2=\dots=c_n=0$の$0$が体$K$の加法単位元を表していたように$c_1 = 1$の$1$は厳密には体$K$の乗法単位元を表します。体の加法単位元$0$と乗法単位元$1$は必ず異なることが証明されています。(ただし、体は2つ以上の要素を持つものとします。)

系1|1つのベクトル$\bm v$が1次独立であることと$\bm v \neq \bm 0$は同値

同値つまり必要十分であることを示します。

まず、1次独立ならば$\bm v \neq \bm 0$は上の命題1から成り立ちます。 逆に、$\bm v \neq \bm 0$ならば1次独立は前回の記事ベクトル空間の公理と部分空間の命題7より$c\bm v = \bm 0$かつ$\bm v \neq \bm 0$から$c=0$が導けるので成り立ちます。

以上から1つのベクトル$\bm v$が1次独立であることと$\bm v \neq \bm 0$は同値です。

また、1次独立なベクトルの組は必ず相異なるベクトルから成ります。これも平面ベクトルで考えると当たり前ですが、今回の定義から導いていきます。

命題2|ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次独立ならばそれらは互いに相異なる

背理法で示します。

$\bm v_1 = \bm v_2$と仮定します。このとき$c_1 = 1,$ $c_2 = -1,$ $c_3=\dots=c_n=0$とすると、

\begin{align}&c_1\bm v_1 + c_2\bm v_2 + \dots + c_n\bm v_n\\[0.7em]={}&1\bm v_1 + (-1)\bm v_1 + 0\bm v_3 + \dots + 0\bm v_n\\[0.7em]={}&\bm v_1 + \{-(1\bm v_1)\} + \bm 0 + \dots + \bm 0\\[0.7em]={}&\bm v_1 + (-\bm v_1)\\[0.7em]={}&\bm 0\end{align}

となり、スカラー$c_1, c_2, \dots, c_n$すべてが$0$というわけではないのに、$\bm 0$になってしまうので1次独立であることに矛盾します。 よって、1次独立ならばそれらは互いに相異なります。

注1|数式の2行目から3行目はベクトル空間の公理の8番目の\(1\bm v = \bm v\)と前回の記事より「ベクトル空間の公理と部分空間の命題8」を利用しています。

1次独立の「独立」の意味

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1次独立の何が独立(independence)かと言うと、どのベクトルもその他のベクトル達を使って表せない組になっているという意味です。 続いてはこれを証明します。

命題3|ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次独立であることと、どのベクトルも残りのベクトルの1次結合で表せないことは同値

同値なので必要十分であることを示したいのですが、「1次結合で表せない」が扱いにくいので、それぞれ対偶を証明します。 つまり、「ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$のうち、少なくとも1つのベクトルが残りのベクトルの1次結合で表せることと、ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次従属であることは同値$\cdots(\ast)$」を示します。

まず「1次結合で表せるならば1次従属」ですが、$\bm v_1$が残りのベクトルの1次結合で表せるとして、

\begin{align}&\bm v_1 = c_2\bm v_2 + \dots + c_n\bm v_n\\[0.7em]\end{align}

とします。この式の右辺を移項する(正確には逆元を両辺に加える)と、

\begin{align}\bm v_1 + (-c_2\bm v_2) + \dots + (-c_n\bm v_n) &= \bm 0\\[0.7em]1\bm v_1 + (-c_2)\bm v_2 + \dots + (-c_n)\bm v_n &= \bm 0\end{align}

となり、少なくとも$\bm v_1$の係数は$0$でないので、$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$は1次従属です。

続いて「1次従属ならば1次結合で表せる」を示します。このとき1次関係式

\begin{align}&c_1\bm v_1 + c_2\bm v_2 + \dots + c_n\bm v_n = \bm 0\\[0.7em]\end{align}

において少なくとも1つ$0$でないスカラーが存在します。よってたとえば$c_1 \neq 0$とします。 このとき、上の式の初項以外を右辺に移項し、全体を$c_1$で割る(正確には$c_1$の乗法逆元を掛ける)と、

\begin{align}c_1\bm v_1 &= (-c_2\bm v_2) + \dots + (-c_n\bm v_n)\\[0.7em]\left(\f{1}{c_1}\right)c_1\bm v_1 &= \left(\f{1}{c_1}\right)(-c_2\bm v_2) + \dots + \left(\f{1}{c_1}\right)(-c_n\bm v_n)\\[0.7em]\bm v_1 &= \left(-\f{c_2}{c_1}\right)\bm v_2 + \dots + \left(-\f{c_n}{c_1}\right)\bm v_n\end{align}

となるので、$\bm v_1$は残りのベクトルの1次結合で表せます。以上から$(\ast)$が示されて、 それぞれがその対偶である「ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次独立であることと、どのベクトルも残りのベクトルの1次結合で表せないことは同値」も証明することができました。

注|最後の式変形はベクトル空間の公理の5番目の\((c_1c_2)\bm v = c_1(c_2\bm v)\)を利用しています。

1次独立と係数比較

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高校数学で「係数比較」をする場面があったと思いますが、実はあの背景には1次独立がいます。このことについて述べたのが次の定理です。 (重要な主張なので「定理」としています。命題のうち、特に重要なものを「定理」と呼びます(例: 三平方の定理)。言葉の使い分けが知りたい人は「公理・定義・定理・命題・補題・系とは?(準備中)」をご覧ください。)

定理1|ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次独立であることと、$c_1\bm v_1 + \dots + c_n\bm v_n = {}$\(c_1^{\prime}\bm v_1 + \dots + c_n^{\prime}\bm v_n\)ならば$c_1=c_1^{\prime}, \dots, c_n=c_n^{\prime}$は同値
命題6|任意の$c \in K$に対して、$c\bm 0 = \bm 0$
命題7|任意の$c \in K$と任意の$\bm v \in V$に対して、もし$c\bm v = \bm 0$ならば$c = 0$または$\bm v = \bm 0$

結論が「または」になっていて2パターンあると証明しにくいので、$c \neq 0$として$\bm v = \bm 0$であることを証明します。

命題5,6では零ベクトルになることを証明するときにあるベクトルとその逆ベクトルの和の形にして示すことを考えましたが、 今回は$c\bm v = \bm 0$と$c \neq 0$が使えることから違うアプローチをしてみます。

$c\bm v = \bm 0$の$c$が邪魔なので、$c^{-1}$をかけて打ち消すことを考えてみます。 ($c^{-1}$は体$K$における$c$の乗法の逆元であり、これが存在することは$K$が体であることから言えます。)

\begin{align}c\bm v &= \bm 0\\[0.7em]c^{-1}(c\bm v) &= c^{-1}\bm 0\end{align}

ここで左辺について公理の5番目の「体の乗法とスカラー倍の互換性」を使います。 また、右辺についてはつい1個前に証明した$c\bm 0 = \bm 0$が使えます。

\begin{align}c\bm v &= \bm 0\\[0.7em]c^{-1}(c\bm v) &= c^{-1}\bm 0\\[0.7em](c^{-1}c)\bm v &= \bm 0\\[0.7em]1\bm v &= \bm 0\\[0.7em]\bm v &= \bm 0\end{align}

最後は公理の8番目の「スカラー倍単位元の存在」を使いました。 これは「体$K$の乗法の単位元をスカラーとしてベクトル$\bm v$にかけたのなら、その結果はもとと同じ$\bm v$になっていて欲しい。」という感覚を公理として要請したものです。 もしもこの性質が無いと、いつも結果が$\bm 0$になるようなスカラー倍を考えることもできてしまうので、そういう場合を排除する目的があります。

1次独立の一部分も1次独立、1次従属に新たに足しても1次従属

目次

この章の最後の命題です。これまた当たり前のように見えますが、それぞれマイナスがかかっている範囲が異なります。 なので、これらが一致することを証明します。

命題4|ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$が1次独立ならばそれらの一部分である$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_m(m < n)$も1次独立である

実はこの命題は次の命題の対偶になっているのでそちらを示せば自動的にこちらも正しいことになります。 というわけで証明は次のものをご覧ください。

命題5|ベクトル$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_m$が1次従属ならばそれらに新たにベクトルを追加した$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n(n > m)$も1次従属である

$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_m$が1次従属ならば少なくとも1つは$0$でない適当なスカラー$c_1, c_2, \dots, c_m$に対して、

\begin{align}&c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m = 0\\[0.7em]\end{align}

が成り立ちます。したがって、$\bm v_1, \bm v_2, \dots, \bm v_n$に対して、

\begin{align}&c_1\bm v_1+\dots+c_m\bm v_m+{}0\bm v_{m+1}+\dots+0\bm v_n = 0\\[0.7em]\end{align}

が成り立ちます。

3. まとめ

目次

3次元空間を全体としてその空間内のある平面に注目する状況のように、ベクトル空間の部分集合を考えることがあります。 このとき、部分集合もベクトル空間になっていると扱いやすいです。このような状況について考えてみましょう。

定義|部分空間(subspace

ベクトル空間$V$の空でない部分集合$W$が、$V$における加法とスカラー倍によりベクトル空間になるとき、 $W$を$V$の部分空間、または、部分ベクトル空間といいます。

ところで「ベクトル空間になる」とは先程の公理を満たすことを意味します。 しかし、部分空間を考えるときに毎回8個の性質がすべて成り立つかを確認するのは大変です。 そこで、「部分空間である」と必要十分な条件を紹介します。

部分空間であるための必要十分条件

体$K$上のベクトル空間$V$の部分集合$W$が部分空間であるための必要十分条件は以下の3つの条件が成り立つことです。

  1. $W$は空集合でない
  2. $\bm u, \bm v \in W \implies \bm u + \bm v \in W$
  3. $c \in K, \bm v \in W \implies c\bm v \in W$

注1|$1$を「$W$は$V$の零ベクトルを含む」に変更可

注2|$2,3$を合わせて「\(c_1, c_2 \in K,\) \(\bm u, \bm v \in W \implies {}\)\(c_1\bm u + c_2\bm v \in W\)」に変更可

確認する条件が3つだけのシンプルな条件になりました。 これらが実際に必要十分条件になっていることの証明は以下の補足に記載してあります。

1番目が「変更可」になっているのは、どちらの条件を使っても3つ全体として等価だからです。 実際に、空集合でないことと3番目の条件から、$c = 0$とすると$\bm 0 \in W$が導けますし、 逆に$\bm 0 \in W$であれば$W$は空集合でないことが導けます。

また、2,3番目の条件も合わせて「変更可」になっています。こちらについても同値であることが証明できます。 気になる人は補足をご覧ください。

補足|部分空間であるための必要十分条件になっていることの証明

3つの条件から公理の8つの性質が満たされることを示します。(必要条件であることは当たり前なので省略)

と言っても、$W$の演算規則は$V$から導入したものであることから、かなりの性質が当然成り立ちます。 どの性質が非自明かというと「加法単位元の存在」と「加法逆元の存在」です。 この2つが$W$においてもきちんと存在することを示せばいいです。

まず、「加法単位元の存在」については"変更可"の理由で説明したように空集合でないことと3番目の条件から、$c = 0$とすると$\bm 0 \in W$が導けます。 この$\bm 0$は$V$の零ベクトルですが、任意の$\bm v \in W$に対しても当然$\bm v + \bm 0 = \bm 0 + \bm v = \bm v$となるので、$W$の零ベクトルでもあります。

次に、「加法逆元の存在」については命題8の$(-c)\bm v = c(-\bm v) = -(c\bm v)$を利用します。 3番目の条件から、$c = -1$とすると$\bm v \in W$ならば$(-1)\bm v \in W$です。 ここで、$(-1)\bm v = -\bm v$なので$-\bm v \in W$となり、$W$の任意のベクトルに対して、それぞれその逆ベクトルが存在することになります。

以上から$W$においても加法とスカラー倍が定義され、ベクトル空間の公理を満たすので$W$はベクトル空間であるといえます。

補足|2,3番目の条件と「\(c_1, c_2 \in K,\) \(\bm u, \bm v \in W \implies {}\)\(c_1\bm u + c_2\bm v \in W\)\(\cdots(*)\)」が同値であることの証明

まずは2,3番目の条件を仮定して(*)を導きます。 3番目の条件から$c_1\bm u \in W$かつ$c_2\bm v \in W$がいえます。 さらに2番目の条件より$c_1\bm u + c_2\bm v \in W$となり(*)が示されます。

逆に(*)を仮定します。 このとき$c_1=c_2=1$(厳密には体$K$の乗法単位元)とすると、2番目の条件が示されます。 また、$c_2=0$(厳密には体$K$の加法単位元)とすると、3番目の条件が示されます。

以上からこれらは同値であることが証明できました。

部分空間の例としてどのようなものが考えられるでしょうか。まず、$V$自身はベクトル空間$V$の部分空間です。 これは部分集合と同様の考え方です。また、ベクトル空間$V$の零ベクトル$\bm 0$だけからなる集合$\{\bm 0\}$も$V$の部分空間です。 後者を$V$の零部分空間といいます。

$V$からその部分空間をつくる基本的な方法について述べたのが次の命題です。 新出用語として、ベクトル空間$V$のベクトル$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$とスカラー$c_1,$ $c_2,\cdots,$ $c_n(\in K)$に対して、 スカラー倍の和

\begin{align}&c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\cdots+c_n\bm v_n\\[0.7em]\end{align}

をベクトル$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$の1次結合または線形結合といいます。

命題9|$V$をベクトル空間、$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$を$V$のベクトルとすると、$\bm v_1,$ $\bm v_2, \cdots,$ $\bm v_n$の1次結合全体の集合$W$は$V$の部分空間になる。

部分空間であるための必要十分条件が成り立つことを示します。

まず、$\bm v_1 \in W$より$W$は空集合ではありません。

次に、加法について$\bm u, \bm v \in W$ならばある係数$a_i,b_i$によって

\begin{cases}\bm u = a_1\bm v_1+a_2\bm v_2+\cdots+a_n\bm v_n\\[0.5em]\bm v = b_1\bm v_1+b_2\bm v_2+\cdots+b_n\bm v_n\end{cases}

と書かれるので、

\begin{align}&\bm u + \bm v\\[0.7em]={}&(a_1\bm v_1+a_2\bm v_2+\cdots+a_n\bm v_n)+(b_1\bm v_1+b_2\bm v_2+\cdots+b_n\bm v_n)\\[0.7em]={}&(a_1+b_1)\bm v_1+(a_2+b_2)\bm v_2+\cdots+(a_n+b_n)\bm v_n\end{align}

となります。($K$は体なので、)$a_i+b_i \in K$であることから$\bm u + \bm v$も$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$の1次結合であり、$W$の元です。

最後に、スカラー倍についても加法と同様にして

\begin{align}&c\bm u\\[0.7em]={}&c(a_1\bm v_1+a_2\bm v_2+\cdots+a_n\bm v_n)\\[0.7em]={}&(ca_1)\bm v_1+(ca_2)\bm v_2+\cdots+(ca_n)\bm v_n\end{align}

となります。(ただし$c \in K$)ここでも($K$は体なので、)$ca_i \in K$であることから$c\bm u$も$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$の1次結合であり、$W$の元です。

以上から$W$は部分空間であることが証明できました。

命題9の$W$を$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$によって生成される、または、張られる部分空間といい、以下のように表します。

  • $\langle\bm v_1,\bm v_2,\cdots,\bm v_n\rangle$
  • $\mathrm{span}(\bm v_1,\bm v_2,\cdots,\bm v_n)$
  • $S[\bm v_1,\bm v_2,\cdots,\bm v_n]$

また、$\bm v_1,$ $\bm v_2,$ $\cdots,$ $\bm v_n$を$W$の生成系といいます。

以上で説明する内容は終わりです、お疲れ様でした。それでは、ここまでの知識を使って部分空間かどうかの判定問題を解いてみます。


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例題1
目次

次のおのおのの条件について、その条件を満たす$\mathbb{R}^3$の元$\bm x = (x,y,z)$全体の集合は$\mathbb{R}^3$の部分空間となるか判別してください。

  1. $2x-y+3z=0$
  2. $2x-y+3z=1$
  3. $2x-y+3z \geqq 0$
  4. $x = 0 \tx{かつ} y = 0$
  5. $xyz=0$
  6. $x^2+y^2-z=0$

(※係数体は$\mathbb{R}$、加法とスカラー倍は自然はものとします。)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

部分空間であるための必要十分条件を使って順番に確かめていきます。部分空間でない場合は反例を示しましょう。 解説のために小問$(i)$の部分集合を$W_i$とします


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例題1の(1)の解説
例題1

$\mathbb{R}^3$の零ベクトルは$\bm 0 = (0,0,0)$です。この元は条件$2x-y+3z=0$を満たすので、$\bm 0 \in W_1$です。

$c_1,c_2 \in \mathbb{R},$ \(\bm u = (u_1,u_2,u_3),\) $ \bm v = (v_1,v_2,v_3) \in W_1$と仮定します。 まず$\bm u, \bm v \in W_1$より、

\begin{cases}2u_1-u_2+3u_3=0\\[0.5em]2v_1-v_2+3v_3=0\end{cases}

が成り立ちます。このとき、$c_1\bm u + c_2\bm v \in W_1$かどうかを調べます。

\begin{align}&c_1\bm u + c_2\bm v\\[0.7em]={}&c_1(u_1,u_2,u_3) + c_2(v_1,v_2,v_3)\\[0.7em]={}&(c_1u_1+c_2v_1,\ c_1u_2+c_2v_2,\ c_1u_3+c_2v_3)\end{align}

なので、$2x-y+3z$に代入すると、

\begin{align}&2(c_1u_1+c_2v_1)-(c_1u_2+c_2v_2)+3(c_1u_3+c_2v_3)\\[0.7em]={}&2c_1u_1+2c_2v_1-c_1u_2-c_2v_2+3c_1u_3+3c_2v_3\\[0.7em]={}&c_1(2u_1-u_2+3u_3)+c_2(2v_1-v_2+3v_3)\\[0.7em]={}&0\end{align}

となります。よって、条件$2x-y+3z=0$を満たすので、$c_1\bm u + c_2\bm v \in W_1$となり、$W_1$は$\mathbb{R}^3$の部分空間となります。


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例題1の(2)の解説
例題1

(1)の条件式の右辺が$1$になりました、このとき$2 \cdot 0-0+3 \cdot 0 \neq 1$より$\bm 0 \notin W_2$なので、$W_2$は$\mathbb{R}^3$の部分空間となりません。 このように条件式が定数項を含んでいると零ベクトルがその条件を満たさないのでベクトル空間にはなりません


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例題1の(3)の解説
例題1

$\bm 0 = (0,0,0)$は条件$2x-y+3z \geqq 0$を満たすので、$\bm 0 \in W_3$です。

(1)と同様に$c_1,c_2 \in \mathbb{R},$ \(\bm u = (u_1,u_2,u_3),\) $ \bm v = (v_1,v_2,v_3) \in W_3$と仮定すると、

\begin{cases}2u_1-u_2+3u_3 \geqq 0\\[0.5em]2v_1-v_2+3v_3 \geqq 0\end{cases}

が成り立ちます。このとき、

\begin{align}&c_1\bm u + c_2\bm v\\[0.7em]={}&(c_1u_1+c_2v_1,\ c_1u_2+c_2v_2,\ c_1u_3+c_2v_3)\end{align}

を$2x-y+3z$に代入すると、

\begin{align}&2(c_1u_1+c_2v_1)-(c_1u_2+c_2v_2)+3(c_1u_3+c_2v_3)\\[0.7em]={}&c_1(2u_1-u_2+3u_3)+c_2(2v_1-v_2+3v_3)\end{align}

となります。これが$0$以上になっていれば部分空間であるといえるのですが、よく考えてみると$c_1$や$c_2$が負の数のときは怪しいです。

そこで反例を探してみると、\(c = -1,\) \(\bm v = (1,1,1)\)のとき$c \in \mathbb{R}$かつ$\bm v \in W_3$ですが、$c\bm v = (-1,-1,-1)$より$c\bm v \notin W_3$です。 したがって、$W_3$は$\mathbb{R}^3$の部分空間となりません。 このように条件式が不等式になっている場合もベクトル空間にはなりません


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例題1の(4)の解説
例題1

$\bm 0 = (0,0,0)$は条件$x = 0$かつ$y = 0$を満たすので、$\bm 0 \in W_4$です。

ここまでと同様に$c_1,c_2 \in \mathbb{R},$ \(\bm u = (u_1,u_2,u_3),\) $ \bm v = (v_1,v_2,v_3) \in W_4$と仮定すると、

\begin{cases}u_1 = 0\\[0.5em]u_2 = 0\\[0.5em]v_1 = 0\\[0.5em]v_2 = 0\end{cases}

が成り立ちます。このとき、

\begin{align}&c_1\bm u + c_2\bm v\\[0.7em]={}&(c_1u_1+c_2v_1,\ c_1u_2+c_2v_2,\ c_1u_3+c_2v_3)\end{align}

なので、

\begin{cases}c_1u_1+c_2v_1 = c_1 \cdot 0 + c_2 \cdot 0 = 0\\[0.5em]c_1u_2+c_2v_2 = c_1 \cdot 0 + c_2 \cdot 0 = 0\end{cases}

となります。よって、条件$x = 0$かつ$y = 0$を満たすので、$c_1\bm u + c_2\bm v \in W_4$となり、$W_4$は$\mathbb{R}^3$の部分空間となります。


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例題1の(5)の解説
例題1

$xyz = 0$つまり、$x = 0$または$y = 0$または$z = 0$が条件です。

$\bm 0 = (0,0,0)$はこれを満たすので、$\bm 0 \in W_5$です。

$c_1,c_2 \in \mathbb{R},$ \(\bm u = (u_1,u_2,u_3),\) $ \bm v = (v_1,v_2,v_3) \in W_5$と仮定すると、

\begin{cases}u_1u_2u_3 = 0\\[0.5em]v_1v_2v_3 = 0\end{cases}

が成り立ちます。このとき、

\begin{align}&c_1\bm u + c_2\bm v\\[0.7em]={}&(c_1u_1+c_2v_1,\ c_1u_2+c_2v_2,\ c_1u_3+c_2v_3)\end{align}

について条件$xyz = 0$を満たすか考えます。一見成り立ちそうですが$\bm u$と$\bm v$で$0$である成分が異なる場合、 例えば\(\bm u = (0,1,1),\) $ \bm v = (1,0,0)$とすると、$\bm u, \bm v \in W_5$ですが、$\bm u + \bm v = (1,1,1)$より$\bm u + \bm v \notin W_5$です。 したがって、$W_5$は$\mathbb{R}^3$の部分空間となりません。


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例題1の(6)の解説
例題1

$\bm 0 = (0,0,0)$は条件$x^2+y^2-z=0$を満たすので、$\bm 0 \in W_6$です。

$c_1,c_2 \in \mathbb{R},$ \(\bm u = (u_1,u_2,u_3),\) $ \bm v = (v_1,v_2,v_3) \in W_6$と仮定すると、

\begin{cases}u_1^2+u_2^2-u_3=0\\[0.5em]v_1^2+v_2^2-v_3=0\end{cases}

が成り立ちます。このとき、

\begin{align}&c_1\bm u + c_2\bm v\\[0.7em]={}&(c_1u_1+c_2v_1,\ c_1u_2+c_2v_2,\ c_1u_3+c_2v_3)\end{align}

について条件$x^2+y^2-z=0$を満たすか考えます。係数があると計算が大変なので一旦$c_1=c_2=1$として$x^2+y^2-z$の値を計算すると、

\begin{align}&x^2+y^2-z\\[0.7em]={}&(u_1+v_1)^2+(u_2+v_2)^2-(u_3+v_3)\\[0.7em]={}&(u_1^2+2u_1v_1+v_1^2)+(u_2^2+2u_2v_2+v_2^2)-(u_3+v_3)\\[0.7em]={}&(u_1^2+u_2^2-u_3)+(v_1^2+v_2^2-v_3)+2u_1v_1+2u_2v_2\\[0.7em]={}&2(u_1v_1+u_2v_2)\end{align}

となります。この残った$2(u_1v_1+u_2v_2)$の影響で$\bm u, \bm v$の値によっては$x^2+y^2-z$が$0$以外になることもあります。 実際に$\bm u = (1,1,2),$ $\bm v = (1,2,5)$とすると、$\bm u, \bm v \in W_6$ですが、$\bm u + \bm v = (2,3,7)$より$\bm u + \bm v \notin W_6$です。 したがって、$W_6$は$\mathbb{R}^3$の部分空間となりません。

このように条件式が2次以上になっている場合もベクトル空間にはなりません

例題1の解答
例題1
  1. 部分空間となる
  2. 部分空間とならない
  3. 部分空間とならない
  4. 部分空間となる
  5. 部分空間とならない
  6. 部分空間とならない

続いて2問目です。高校数学で学んだ「共通部分」や「和集合」が登場します。


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例題2
目次

$W_1,W_2$をベクトル空間$V$の2つの部分空間とします。このとき、次のものが常に$V$の部分空間かどうか判別してください。

  1. $W_1 \cap W_2 \q \tx{(共通部分)}$
  2. $W_1 \cup W_2 \q \tx{(和集合)}$
  3. $W_1 + W_2 = \{\bm w_1 + \bm w_2 \mid \bm w_1 \in W_1, \bm w_2 \in W_2\} \q \tx{(和空間)}$

※各解説・解答からこの例題に戻れます

$W_1,W_2$が具体的に決められておらず抽象的なので難しく感じるかもしれません。 しかし、部分空間かどうかの判別なのでやることは同じです。


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例題2の(1)の解説
例題2

$W_1$も$W_2$もベクトル空間$V$の部分空間なので、その零ベクトル$\bm 0$を含みます。つまり、$\bm 0 \in W_1$かつ$\bm 0 \in W_2$です。 したがって、$\bm 0 \in W_1 \cap W_2$です。

また、$\bm u, \bm v \in W_1 \cap W_2$と仮定すると、$\bm u, \bm v \in W_1$かつ$\bm u, \bm v \in W_2$です。 ここで、$W_1,W_2$が部分空間であることから任意のスカラー$c_1,c_2$に対して、$c_1\bm u+c_2\bm v \in W_1$かつ$c_1\bm u+c_2\bm v \in W_2$が成り立ちます。 よって、$c_1\bm u+c_2\bm v \in W_1 \cap W_2$となります。

以上から、$W_1 \cap W_2$は$V$の部分空間といえます。

ちなみに例題1の(4)($x = 0$かつ$y = 0$)はこの具体例であり、たしかに部分空間となっています。


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例題2の(2)の解説
例題2

共通部分と同様に$\bm 0 \in W_1 \cup W_2$といえます。

ここでわかりやすくするために具体例を考えてみます。例題1のように$V = \mathbb{R}^3$として、(4)の「かつ」を「または」に変えた「$x = 0$または$y = 0$」を考えてみます。 するとこれは$yz$平面と$zx$平面の和集合になります。

ここで、それぞれの平面からベクトルを持ってきて和をとってみます。 $\bm u = (0,1,1),$ $\bm v = (1,0,1)$とすると、$\bm u + \bm v = (1,1,2)$となります。 よく見るとこれは条件「$x = 0$または$y = 0$」を満たしていません。よって、$W_1 \cup W_2$は常には$V$の部分空間ではありません。

今回考えた具体例のように例題1の(5)($xyz=0$)もこの具体例であり、たしかに部分空間ではありません。


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例題2の(3)の解説
例題2

$\bm 0 \in W_1$かつ$\bm 0 \in W_2$と、$\bm 0 + \bm 0 = \bm 0$より、$\bm 0 \in W_1 + W_2$です。

$\bm u, \bm v \in W_1 + W_2$と仮定すると、あるベクトル$\bm w_1,\bm w_1^{\prime} \in W_1,$ $\bm w_2,\bm w_2^{\prime} \in W_2$を用いて、

\begin{cases}\bm u = \bm w_1 + \bm w_2\\[0.5em]\bm v = \bm w_1^{\prime} + \bm w_2^{\prime}\end{cases}

と表せます。よって、任意のスカラー$c_1,c_2$に対して、

\begin{align}&c_1\bm u + c_2\bm v\\[0.7em]={}&c_1(\bm w_1 + \bm w_2) + c_2(\bm w_1^{\prime} + \bm w_2^{\prime})\\[0.7em]={}&(c_1\bm w_1 + c_2\bm w_1^{\prime}) + (c_1\bm w_2 + c_2\bm w_2^{\prime})\end{align}

となります。ここで、$W_1,W_2$は部分空間なので、$c_1\bm w_1 + c_2\bm w_1^{\prime} \in W_1$かつ$c_1\bm w_2 + c_2\bm w_2^{\prime} \in W_2$です。 したがって、$c_1\bm u + c_2\bm v \in W_1 + W_2$が成り立ちます。

以上から、$W_1 + W_2$は$V$の部分空間といえます。名前が和空間となっているように部分空間同士の和はこのように定義します。もしも(2)のように定義してしまうと、和が部分空間にならなくなってしまうからです。 それぞれの部分空間に含まれるベクトルのすべてのパターンの和を集めた集合を考える必要があります。

例題2の解答
例題2
  1. 部分空間である
  2. 部分空間でない
  3. 部分空間である

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4.

目次

今回の内容をまとめると、

  1. ベクトル空間とは体$K$と空でない集合$V$上に加法とスカラー倍という2つの演算が定義されていて、8つの性質(ベクトル空間の公理)を満たすもの。
  2. $W$が$V$の部分空間であるとは、ベクトル空間$V$の空でない部分集合$W$が、$V$における加法とスカラー倍によりベクトル空間になることで、部分空間であるための必要十分条件により判別できる。
  3. $c_1\bm v_1+\cdots+c_n\bm v_n$をベクトル$\bm v_1,\cdots,\bm v_n$の1次結合または線形結合という。
  4. 成分の条件式の形で表された集合がベクトル空間かどうかを判別するときは定数項を含まない、$=0$の形かつ(連立)1次式になっていることが目安。(加法やスカラー倍は自然なものとする。)
  5. 部分空間の共通部分と和空間は部分空間になる。和集合は必ずしも部分空間にならないので注意。

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