3乗根の有理化と方程式の作成
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この記事では有理化の発展として3乗根の有理化について解説していきます。また、有理化を使って与えられた数が解となる方程式を作成し、有理数解の性質を使ってその数が有理数かどうか判別する方法についても解説します。
目次
- 3乗根の分母の有理化(2項以下ver.)
- 3乗根の分母の有理化(3項ver.)
- 2乗根の3項ver.との比較
- 例1. 3乗の和・差が使える形
- 例2. 因数分解できる形
- 例3. \(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)
- 例題2 3乗根の分母の有理化(3項ver.)
- 有理化を使った方程式の作成
- まとめ
1. 3乗根の分母の有理化(2項以下ver.)
目次それでは3乗根の分母の有理化について考えていきましょう。まずは分母の項数が2つ以下の場合を考えます。
2乗根の有理化の復習から考える3乗根の有理化
目次3乗根の有理化を考えるにあたって、2乗根の場合を参考にします。 はじめに、分母の項が1つの場合は「2乗すると中身の数になる」ことを利用すれば簡単に有理化できました。
\[\frac{1}{\sqrt{2}}=\frac{1 \times \sqrt{2}}{\sqrt{2} \times \sqrt{2}}=\frac{\sqrt{2}}{2}\]
3乗根の場合も同じ発想が使えます。「3乗すると中身の数になる」ことを利用しましょう。 一般に\(\dfrac{1}{\sqrt[3]{n}}\)(\(n\)は有理数)とすると、
\[\frac{1}{\sqrt[3]{n}}=\frac{1 \times (\sqrt[3]{n})^2}{\sqrt[3]{n} \times (\sqrt[3]{n})^2}=\frac{\sqrt[3]{n^2}}{n}\]
のようにして有理化することができます。次に分母の項数が2つの場合を考えます。
2乗根のときは「\((a+b)(a-b)= {} \)\((a^2-b^2)\)」を利用して有理化をしました。具体例は以下の通りです。
\[\frac{1}{\sqrt{5}-1}=\frac{1 \times (\sqrt{5}+1)}{(\sqrt{5}-1) \times (\sqrt{5}+1)}=\frac{\sqrt{5}+1}{4}\]
これを参考にして3乗根で対応する方法がないか考えます。2乗根のときは2乗の差の形にすることで有理化していたので、 3乗根では3乗の和・差の形にして有理化できないかと予想します。具体的に試してみると次のようになります。
\begin{align} &\frac{1}{\sqrt[3]{5}-1}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(\sqrt[3]{5})^2+\sqrt[3]{5}+1\}}{(\sqrt[3]{5}-1) \times \{(\sqrt[3]{5})^2+\sqrt[3]{5}+1\}}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt[3]{5})^2+\sqrt[3]{5}+1}{(\sqrt[3]{5})^3-1^3}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt[3]{25}+\sqrt[3]{5}+1}{4} \end{align}
上手くいくことが確かめられました。これを一般化すると次のようになります。(\(p,q\)は有理数で複号同順)
\begin{align} &\frac{1}{\sqrt[3]{p} \pm \sqrt[3]{q}}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(\sqrt[3]{p})^2 \mp \sqrt[3]{pq} + (\sqrt[3]{q})^2\}}{(\sqrt[3]{p} \pm \sqrt[3]{q}) \times \{(\sqrt[3]{p})^2 \mp \sqrt[3]{pq} + (\sqrt[3]{q})^2\}}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt[3]{p})^2 \mp \sqrt[3]{pq} + (\sqrt[3]{q})^2}{(\sqrt[3]{p})^3 \pm (\sqrt[3]{q})^3}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt[3]{p^2} \mp \sqrt[3]{pq} + \sqrt[3]{q^2}}{p \pm q} \end{align}
以上の結果をまとめます。
-
分母の項数が1つの場合は「3乗すると中身の数になる」ことを利用する。
\[\frac{1}{\sqrt[3]{n}}=\frac{1 \times (\sqrt[3]{n})^2}{\sqrt[3]{n} \times (\sqrt[3]{n})^2}=\frac{\sqrt[3]{n^2}}{n}\]
-
分母の項数が2つの場合は「3乗の和・差」を利用する。
\begin{align} &\frac{1}{\sqrt[3]{p} \pm \sqrt[3]{q}}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(\sqrt[3]{p})^2 \mp \sqrt[3]{pq} + (\sqrt[3]{q})^2\}}{(\sqrt[3]{p} \pm \sqrt[3]{q}) \times \{(\sqrt[3]{p})^2 \mp \sqrt[3]{pq} + (\sqrt[3]{q})^2\}}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt[3]{p})^2 \mp \sqrt[3]{pq} + (\sqrt[3]{q})^2}{(\sqrt[3]{p})^3 \pm (\sqrt[3]{q})^3}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt[3]{p^2} \mp \sqrt[3]{pq} + \sqrt[3]{q^2}}{p \pm q} \end{align}
それでは例題を解いて実際に使ってみましょう。
素直に\((\sqrt[3]{9})^2\)を分母分子にかけても有理化できますが、\(9=3^2\)に注目するとより速く解けます。
\[\frac{1}{\sqrt[3]{9}}=\frac{1}{(\sqrt[3]{3})^2}=\frac{1 \times \sqrt[3]{3}}{(\sqrt[3]{3})^2 \times \sqrt[3]{3}}=\frac{\sqrt[3]{3}}{3}\]
ちなみに\((\sqrt[3]{9})^2\)を分母分子にかけた場合は約分する必要があります。
\[\frac{1}{\sqrt[3]{9}}=\frac{1 \times (\sqrt[3]{9})^2}{\sqrt[3]{9} \times (\sqrt[3]{9})^2}=\frac{\sqrt[3]{9^2}}{9}=\frac{3\sqrt[3]{3}}{9}=\frac{\sqrt[3]{3}}{3}\]
通分してから有理化すると分母の項数が増えてしまうので、有理化してから通分します。
\begin{align} &\dfrac{1}{2\sqrt[3]{2} - \sqrt[3]{12}} - \dfrac{1}{\sqrt[3]{3} + 1}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(2\sqrt[3]{2})^2+2\sqrt[3]{2}\sqrt[3]{12}+(\sqrt[3]{12})^2\}}{(2\sqrt[3]{2} - \sqrt[3]{12}) \times \{(2\sqrt[3]{2})^2+2\sqrt[3]{2}\sqrt[3]{12}+(\sqrt[3]{12})^2\}} - \frac{1 \times \{(\sqrt[3]{3})^2-\sqrt[3]{3}+1^2\}}{(\sqrt[3]{3} + 1) \times \{(\sqrt[3]{3})^2-\sqrt[3]{3}+1^2\}}\\[0.7em]=&\frac{4\sqrt[3]{4}+4\sqrt[3]{3}+2\sqrt[3]{18}-(\sqrt[3]{9}-\sqrt[3]{3}+1)}{4}\\[0.7em]=&\frac{4\sqrt[3]{4}+5\sqrt[3]{3}+2\sqrt[3]{18}-\sqrt[3]{9}-1}{4} \end{align}
- \(\dfrac{\sqrt[3]{3}}{3}\)
- \(\dfrac{4\sqrt[3]{4}+5\sqrt[3]{3}+2\sqrt[3]{18}-\sqrt[3]{9}-1}{4}\)
2. 3乗根の分母の有理化(3項ver.)
目次続いて、3乗根で分母の項数が3つの場合を考えます。
2乗根の3項ver.との比較
目次先程と同じように有理化のヒントがないか2乗根の場合を見てみます。 武器になる数学Ⅰ第1章の「循環小数・有理化・\(\sqrt{A^2}\)・二重根号」に登場したように 和と差の積を2回使うことで有理化することができます。 一般に\(\dfrac{1}{\sqrt{a} + \sqrt{b} \pm \sqrt{c}}\)の有理化は、(\(a,b,c\)は有理数で複号同順)
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt{a} + \sqrt{b} \pm \sqrt{c}}\\[0.7em]=&\dfrac{1}{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) \pm \sqrt{c}}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times \{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) \mp \sqrt{c}\}}{\{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) \pm \sqrt{c}\} \times \{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) \mp \sqrt{c}\}}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt{a} + \sqrt{b} \mp \sqrt{c}}{(\sqrt{a} + \sqrt{b})^2-(\sqrt{c})^2}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt{a} + \sqrt{b} \mp \sqrt{c}}{(a+b-c) + 2\sqrt{ab}}\quad\cdots\cdots\text{(①)}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt{a} + \sqrt{b} \mp \sqrt{c}) \times \{(a+b-c) - 2\sqrt{ab}\}}{\{(a+b-c) + 2\sqrt{ab}\} \times \{(a+b-c) - 2\sqrt{ab}\}}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt{a} + \sqrt{b} \mp \sqrt{c}) \times \{(a+b-c) - 2\sqrt{ab}\}}{(a+b-c)^2-4ab}\\[0.7em]=&\frac{(a-b+c)\sqrt{a} + (-a+b+c)\sqrt{b} \mp (a+b+c)\sqrt{c} \pm 2\sqrt{abc}}{a^2+b^2+c^2-2ab-2bc-2ca} \end{align}
となります。特に\(a+b=c\)のときは①で分母の項数が1になるので計算が楽になります。 数値計算するときはこれを考えて\(a,b,c\)を選ぶようにしましょう。 なお、分母にマイナスの項が多いときは分母分子に\(-1\)をかければ上と同じ状況になります。
この考え方が3乗根の場合でも使えるか確かめてみます。
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b} \pm \sqrt[3]{c}}\\[0.7em]=&\dfrac{1}{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b}) \pm \sqrt[3]{c}}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times \{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b})^2 \mp \sqrt[3]{c}(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b}) + (\sqrt[3]{c})^2\}}{\{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b}) \pm \sqrt[3]{c}\} \times \{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b})^2 \mp \sqrt[3]{c}(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b}) + (\sqrt[3]{c})^2\}}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b})^2 \mp \sqrt[3]{c}(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b}) + (\sqrt[3]{c})^2}{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b})^3 \pm (\sqrt[3]{c})^3}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b})^2 \mp \sqrt[3]{c}(\sqrt[3]{a} + \sqrt[3]{b}) + (\sqrt[3]{c})^2}{(a+b \pm c) + 3\sqrt[3]{a^2b} + 3\sqrt[3]{ab^2}}\quad\cdots\cdots\text{(②)} \end{align}
計算の途中ですが、②を見ると①と違って分母の項数が3から2に減っていません。つまり、先程と同様には有理化できないことを表しています。 このように3乗根で分母の項が3つの場合は2乗根のときを真似して有理化することはできません。 しかし、特定の形の場合は別の上手い変形によって有理化できるのでその例を見ていきます。
例1. 3乗の和・差が使える形
目次1つ目は先程使った3乗の和・差が使える形です。公式をよく見てみると、\((a \pm b)(a^2 \mp ab + b^2)=a^3 \pm b^3\)なので、 分母が\(a^2 \mp ab + b^2\)の形のときは有理化できそうです。具体例を見てみましょう。
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt[3]{25} - \sqrt[3]{10} + \sqrt[3]{4}}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times (\sqrt[3]{5} + \sqrt[3]{2})}{(\sqrt[3]{25} - \sqrt[3]{10} + \sqrt[3]{4}) \times (\sqrt[3]{5} + \sqrt[3]{2})}\\[0.7em]=&\dfrac{\sqrt[3]{5} + \sqrt[3]{2}}{(\sqrt[3]{5})^3 + (\sqrt[3]{2})^3}\\[0.7em]=&\dfrac{\sqrt[3]{5} + \sqrt[3]{2}}{7} \end{align}
このように有理化できます。ちなみに、一般化すると次のようになります。(\(a,b\)は有理数で複号同順)
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt[3]{a^2} \pm \sqrt[3]{ab} + \sqrt[3]{b^2}}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times (\sqrt[3]{a} \mp \sqrt[3]{b})}{(\sqrt[3]{a^2} \pm \sqrt[3]{ab} + \sqrt[3]{b^2}) \times (\sqrt[3]{a} \mp \sqrt[3]{b})}\\[0.7em]=&\dfrac{\sqrt[3]{a} \mp \sqrt[3]{b}}{(\sqrt[3]{a})^3 \mp (\sqrt[3]{b})^3}\\[0.7em]=&\dfrac{\sqrt[3]{a} \mp \sqrt[3]{b}}{a \mp b} \end{align}
例2. 因数分解できる形
目次2つ目は因数分解ができる形です。分母の項数が3個でも、因数分解できて2項×2項の形にできれば、分母の項数が2個のときと同じように有理化できます。 具体例で確認します。
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt[3]{25} + 3\sqrt[3]{5} + 2}\\[0.7em]=&\dfrac{1}{(\sqrt[3]{5} + 1)(\sqrt[3]{5} + 2)}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times (\sqrt[3]{25}-\sqrt[3]{5}+1)(\sqrt[3]{25}-2\sqrt[3]{5}+4)}{(\sqrt[3]{5} + 1)(\sqrt[3]{5} + 2) \times (\sqrt[3]{25}-\sqrt[3]{5}+1)(\sqrt[3]{25}-2\sqrt[3]{5}+4)}\\[0.7em]=&\dfrac{(\sqrt[3]{25}-\sqrt[3]{5}+1)(\sqrt[3]{25}-2\sqrt[3]{5}+4)}{\{(\sqrt[3]{5})^3+1^3\}\{(\sqrt[3]{5})^3+2^3\}}\\[0.7em]=&\dfrac{7\sqrt[3]{25}-\sqrt[3]{5}-11}{78} \end{align}
例3. \(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)
目次3つ目はマイナーですが、この形でも一応、有理化できるということで挙げておきます。それが、\(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)の形です。 有理化の方法としては3乗の和・差にする方法を改良してうまく無理数が出ないようにできないか考えます。
まず、2乗根の3項ver.との比較で試したようにして有理化を試みます。すると分母は、
\begin{align} &\{(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n})+c\} \times \{(a\sqrt[3]{n^2} + b\sqrt[3]{n})^2 - c(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}) + c^2\}\\[0.7em]=&(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n})^3+c^3\\[0.7em]=&a^3n^2+3a^2bn\sqrt[3]{n^2}+3ab^2n\sqrt[3]{n}+b^3n+c^3 \end{align}
となります。\(3a^2bn\sqrt[3]{n^2}+3ab^2n\sqrt[3]{n}\)の部分が残ってしまい有理化が失敗したのですが、 この部分が消えるように掛け算を調整できないか考えてみます。すると、\(-3abn\)を付け加えたときに上手くいきそうなことがわかります。 この方法を使って有理化してみましょう。
\begin{align} &\frac{1}{a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(a\sqrt[3]{n^2} + b\sqrt[3]{n})^2 - c(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}) + c^2 - 3abn\}}{\{(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n})+c\} \times \{(a\sqrt[3]{n^2} + b\sqrt[3]{n})^2 - c(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}) + c^2 - 3abn\}}\\[0.7em]=&\frac{(a\sqrt[3]{n^2} + b\sqrt[3]{n})^2 - c(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}) + c^2 - 3abn}{(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n})^3+c^3 -3abn\{(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n})+c\}}\\[0.7em]=&\frac{(b^2-ac)\sqrt[3]{n^2}+(a^2n-bc)\sqrt[3]{n}+c^2-abn}{a^3n^2+b^3n+c^3-3abcn} \end{align}
符号がマイナスのときも\(-3abn\)を付け加えることでうまく相殺されます。余裕がある人は頭の片隅に覚えておきましょう。
公式 \((x+y+z) \)\((x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)= {} \)\(x^3+y^3+z^3-3xyz\) を利用しても解くことができます。 分母が\(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)の形のときは\(-3xyz\)の部分が綺麗に有理数になるからです。
\begin{align} &\frac{1}{a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(a\sqrt[3]{n^2})^2+(b\sqrt[3]{n})^2+c^2-abn-bc\sqrt[3]{n}-ca\sqrt[3]{n^2}\}}{(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c) \times \{(a\sqrt[3]{n^2})^2+(b\sqrt[3]{n})^2+c^2-abn-bc\sqrt[3]{n}-ca\sqrt[3]{n^2}\}}\\[0.7em]=&\frac{(b^2-ac)\sqrt[3]{n^2}+(a^2n-bc)\sqrt[3]{n}+c^2-abn}{a^3n^2+b^3n+c^3-3abcn} \end{align}
実は\(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)のときは
\[(a\sqrt[3]{n^2} + b\sqrt[3]{n})^2 - c(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}) + c^2 - 3abn=(a\sqrt[3]{n^2})^2+(b\sqrt[3]{n})^2+c^2-abn-bc\sqrt[3]{n}-ca\sqrt[3]{n^2}\]
が成り立ちます。 なので、実質同じものをかけていることになります。
分母が3項のときに因数分解できるパターンは主に以下の3つ
- \(a^2 \mp ab + b^2\)の形→3乗の和・差を利用
- 因数分解できる形→因数それぞれに3乗の和・差を利用
- \(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)の形→3乗の和・差利用の掛け算に\(-3abn\)を追加or \((x+y+z) \)\((x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)= {} \)\(x^3+y^3+z^3-3xyz\) を利用
3項のときも無事まとめられたので例題を解いて確認しましょう。
(1), (2)どちらも分母が\(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)の形なので、もちろんこの方法で解けます。 せっかくなので、解説では別の方法で解いていきます。
よく見ると、分母が\(a^2 \mp ab + b^2\)の形になっています。
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3} + 1}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times (\sqrt[3]{3} - 1)}{(\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3} + 1) \times (\sqrt[3]{3} - 1)}\\[0.7em]=&\dfrac{\sqrt[3]{3} - 1}{(\sqrt[3]{3})^3 - 1^3}\\[0.7em]=&\dfrac{\sqrt[3]{3} - 1}{2} \end{align}
\begin{align} &\dfrac{1}{\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3} + 1}\\[0.7em]=&\frac{1 \times \{(\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3})^2 - (\sqrt[3]{9}+\sqrt[3]{3}) + 1^2 - 3\cdot 1 \cdot 1 \cdot 3\}}{\{(\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3}) + 1\} \times \{(\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3})^2 - (\sqrt[3]{9}+\sqrt[3]{3}) + 1^2 - 3\cdot 1 \cdot 1 \cdot 3\}}\\[0.7em]=&\frac{(\sqrt[3]{9} + \sqrt[3]{3})^2 - (\sqrt[3]{9}+\sqrt[3]{3}) + 1 - 9}{(\sqrt[3]{9}+\sqrt[3]{3})^3+1^3 -9\{(\sqrt[3]{9}+\sqrt[3]{3})+1\}}\\[0.7em]=&\frac{2\sqrt[3]{3}-2}{9+3+1-9}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt[3]{3}-1}{2} \end{align}
実はこの問題、うまく変形すると因数分解できる形になるので、その方法を紹介します。式を見やすくするために、\(t=\sqrt[3]{2}\)とおきます。
<解法1> 1つ目は、\(6=t^3+4\)と変形する方法です。実際に計算してみます。
\begin{align} &\dfrac{\sqrt[3]{2}}{4\sqrt[3]{4} + \sqrt[3]{2} + 6}\\[0.7em]=&\dfrac{t}{4t^2 + t + 6}\\[0.7em]=&\dfrac{t}{4t^2 + t + t^3 + 4}\\[0.7em]=&\dfrac{t}{(t^2 + 1)(t + 4)}\\[0.7em]=&\dfrac{t \times (t^4 - t^2 + 1)(t^2 -4t + 16)}{(t^2 + 1)(t + 4) \times (t^4 - t^2 + 1)(t^2 -4t + 16)}\\[0.7em]=&\dfrac{t(t^4 - t^2 + 1)(t^2 -4t + 16)}{((t^2)^3 + 1^3)(t^3 + 4^3)}\\[0.7em]=&\dfrac{t^7-4t^6+16t^5-t^5+4t^4-16t^3+t^3-4t^2+16t}{5 \times 66}\\[0.7em]=&\dfrac{2(13t^2+14t-14)}{5 \times 66} \qquad \text{(\(t^3=2\)を利用)}\\[0.7em]=&\dfrac{13\sqrt[3]{4}+14\sqrt[3]{2}-23}{165} \end{align}
<解法2> 2つ目は分母分子に\(t^2\)をかける方法です。実は、分子の\(\sqrt[3]{2}\)はこれを暗示するために付けました。
\begin{align} &\dfrac{t}{4t^2 + t + 6}\\[0.7em]=&\dfrac{t^3}{4t^4 + t^3 + 6t^2}\\[0.7em]=&\dfrac{t^3}{6t^2+8t+2}\\[0.7em]=&\dfrac{t^3}{2(t+1)(3t+1)}\\[0.7em]=&\dfrac{1 \times (t^2-t+1)(9t^2-3t+1)}{(t+1)(3t+1) \times (t^2-t+1)(9t^2-3t+1)}\\[0.7em]=&\dfrac{(t^2-t+1)(9t^2-3t+1)}{(t^3+1)(27t^3+1)}\\[0.7em]=&\dfrac{9t^4-3t^3+t^2-9t^3+3t^2-t+9t^2-3t+1}{3 \times 55}\\[0.7em]=&\dfrac{13t^2+14t-14}{3 \times 55}\\[0.7em]=&\dfrac{13\sqrt[3]{4}+14\sqrt[3]{2}-23}{165} \end{align}
今回は\((x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)=x^3+y^3+z^3-3xyz\)を利用してみます。
\begin{align} &\dfrac{\sqrt[3]{2}}{4\sqrt[3]{4} + \sqrt[3]{2} + 6}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt[3]{2} \times \{(4\sqrt[3]{4})^2+(\sqrt[3]{2})^2+6^2-4 \cdot 2-6\sqrt[3]{2}-24\sqrt[3]{4}\}}{(4\sqrt[3]{4} + \sqrt[3]{2} + 6) \times \{(4\sqrt[3]{4})^2+(\sqrt[3]{2})^2+6^2-4 \cdot 2-6\sqrt[3]{2}-24\sqrt[3]{4}\}}\\[0.7em]=&\frac{\sqrt[3]{2} \times \{(1^2-24)\sqrt[3]{4}+(4^2 \cdot 2- 6)\sqrt[3]{2}+6^2 - 8\}}{(4\sqrt[3]{4})^3 + (\sqrt[3]{2})^3 + 6^3 -3 \cdot 4\sqrt[3]{4} \cdot \sqrt[3]{2} \cdot 6}\\[0.7em]=&\dfrac{26\sqrt[3]{4} + 28\sqrt[3]{2} - 46}{256 + 2 + 216 - 144}\\[0.7em]=&\dfrac{13\sqrt[3]{4} + 14\sqrt[3]{2} - 23}{165} \end{align}
- \(\dfrac{\sqrt[3]{3} - 1}{2}\)
- \(\dfrac{13\sqrt[3]{4}+14\sqrt[3]{2}-23}{165}\)
次は、この3乗根の有理化を利用して解ける問題を紹介します。
3. 有理化を使った方程式の作成
目次いきなりですが、例題を見てみます。
いかつい式が登場しましたが、どのように有理化を使うのか順番に見ていきましょう。
\(a = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{676}{27}}+5} - \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{676}{27}}-5}\)という等式をうまく変形して整数と\(a\)だけが登場するようにするのが目標です。 そのために、まず右辺を有理化しましょう。ここで、見やすいように\(\alpha = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{676}{27}}+5},\) \(\beta = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{676}{27}}-5}\)とおきます。
\begin{align} a&=\alpha - \beta\\[0.7em]a(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2)&=\alpha^3-\beta^3\\[0.7em]a(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2)&=10\\[0.7em] \end{align}
これで右辺は無事整数になりました。しかし、まだ左辺に\(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2\)が残ってしまっています。 ここで、整数のほかに\(a\)も使えることを思い出し、\(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2\)を\(a\)と整数を使って表せないか考えてみます。
\(a=\alpha - \beta\)より、\(a^2\)を考えると\(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2=a^2+3\alpha\beta\)となり\(\alpha\beta\)さえ書き換えられれば、上手くいきます。 よく見ると、実はこの\(\alpha\beta\)は直接計算できて、
\begin{align} &\alpha\beta\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\left(\sqrt{\dfrac{676}{27}}+5\right)\left(\sqrt{\dfrac{676}{27}}-5\right)}\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\dfrac{676}{27}-25}\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\dfrac{1}{27}}\\[0.7em]=&\dfrac{1}{3} \end{align}
と求めることができます。以上をまとめると、
\begin{align} a&=\alpha - \beta\\[0.7em]a(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2)&=10\\[0.7em]a(a^2+3\alpha\beta)&=10\\[0.7em]a\left(a^2+3 \cdot \dfrac{1}{3}\right)&=10\\[0.7em]a^3+a-10&=0\\[0.7em] \end{align}
となるので、\(a\)を解にもつ整数を係数とする3次方程式の一つとして、\(x^3+x-10=0\)を示すことができます。
「\(a\)を最も簡単な形で表してください。」とあるので、どうやら\(a\)はもっと簡単な形で書けるようです。 流れを考えると(1)がヒントになりそうなのでこの3次方程式から紐解いていきます。
\(a\)は(1)で示した3次方程式の解であることがわかっています。そこで、作った3次方程式を実際に解いてみます。すると、
\begin{align} x^3+x-10&=0\\[0.7em](x-2)(x^2+2x+5)&=0\\[0.7em] \end{align}
となります。ここで\(a\)は実数であることから、3次方程式の実数解に注目します。 すると、\(x^2+2x+5=(x+1)^2+4>0\)なのでこの方程式の実数解は2のみであることがわかります。
以上から、\(a=2\)と言うことができます。実はすごくシンプルな値でしたね。
明らかに\(a\)と同じ雰囲気が漂っているのでとりあえず、\(b\)を解にもつ整数を係数とする3次方程式を考えてみます。 考え方も先程と同じなので、復習として考えてみてください。見やすいように\(\gamma = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{381}{64}}+2},\) \(\delta = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{381}{64}}-2}\)とおきます。
\begin{align} b&=\gamma - \delta\\[0.7em]b(\gamma^2+\gamma\delta+\delta^2)&=\gamma^3-\delta^3\\[0.7em]b(\gamma^2+\gamma\delta+\delta^2)&=4\\[0.7em]b(b^2+3\gamma\delta)&=4\\[0.7em] \end{align}
ここで、\(\gamma\delta\)の値を求めると、
\begin{align} &\gamma\delta\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\left(\sqrt{\dfrac{381}{64}}+2\right)\left(\sqrt{\dfrac{381}{64}}-2\right)}\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\dfrac{381}{64}-4}\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\dfrac{125}{64}}\\[0.7em]=&\dfrac{5}{4} \end{align}
これを使うと、
\begin{align} b(b^2+3\gamma\delta)&=4\\[0.7em]b\left(b^2+3 \cdot \dfrac{5}{4}\right)&=4\\[0.7em]4b^3+15b-16&=0\\[0.7em] \end{align}
よって、\(b\)は3次方程式\(4x^3+15x-16=0\)の解であることがわかりました。 このことを利用して有理数かどうかを判別していきます。
ここで使うのが「整数係数\(n\)次方程式の有理数解の性質」です。 (2)で3次方程式を因数分解するときに因数定理を使った人が多いと思います。 そのときに\(\pm\dfrac{(\text{定数項の約数})}{(\text{最高次の係数の約数})}\)を候補にして探したのではないでしょうか。
これは有理数解の性質としてきちんと証明することができます。 つまり、「整数係数\(n\)次方程式の有理数解の候補は\(\pm\dfrac{(\text{定数項の約数})}{(\text{最高次の係数の約数})}\)のみ」です。 なので、もし\(b\)が有理数ならばこの候補のいずれかです。逆にどの候補にも当てはまらない(方程式を満たさない)ならば\(b\)は無理数です。
というわけで調べてみると、\(b\)が有理数だとしたときの候補は\(b>0\)に注意すると\(16,8,4,2,1,\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{4}\)です。 しかし、これらは全て3次方程式\(4x^3+15x-16=0\)を満たさないので\(b\)は無理数です。 解答では有理数解の候補の証明もきちんと記述したので確認してください。
- \(x^3+x-10=0\)
- \(2\)
-
\(\gamma = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{381}{64}}+2},\) \(\delta = \sqrt[3]{\sqrt{\dfrac{381}{64}}-2}\)とおく。
\begin{align} &b=\gamma - \delta\\[0.7em]&b(\gamma^2+\gamma\delta+\delta^2)=\gamma^3-\delta^3\\[0.7em]&b(\gamma^2+\gamma\delta+\delta^2)=4\\[0.7em]&b(b^2+3\gamma\delta)=4 \end{align}
\(\gamma\delta\)の値を求めると、
\begin{align} &\gamma\delta\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\left(\sqrt{\dfrac{381}{64}}+2\right)\left(\sqrt{\dfrac{381}{64}}-2\right)}\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\dfrac{381}{64}-4}\\[0.7em]=&\sqrt[3]{\dfrac{125}{64}}\\[0.7em]=&\dfrac{5}{4} \end{align}
したがって、
\begin{align} &b(b^2+3\gamma\delta)=4\\[0.7em]&b\left(b^2+3 \cdot \dfrac{5}{4}\right)=4\\[0.7em]&4b^3+15b-16=0 \end{align}
よって、\(b\)は3次方程式\(4x^3+15x-16=0\cdots\cdots\text{①}\)の解である。 \(b\)が有理数であると仮定すると\(b>0\)より\(b=\dfrac{p}{q}\)(ただし、\(p,\ q\)は互いに素な自然数)とおける。 これが①を満たすから、
\[4\cdot\left(\dfrac{p}{q}\right)^3+15\cdot\dfrac{p}{q}-16=0\]
両辺に\(q^3\)をかけると、
\[4p^3+15pq^2-16q^3=0\]
式変形すると、\(4p^3=(-15pq+16q^2)q\)となり、右辺が\(q\)の倍数だから\(4p^3\)も\(q\)の倍数である。 ここで、\(p,\ q\)は互いに素より\(q\)は4の約数である。
同様にして式変形から、\((4p^2+15q^2)p=16q^3\)が導けて、\(p\)は16の約数であることもいえる。 したがって、\(b\)が有理数だと仮定すると、考えられる値は\(16,8,4,2,1,\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{4}\)に限られる。
しかし、いずれの値も①を満たさないので\(b\)は無理数である。
4. まとめ
目次今回の内容をまとめると、
- 3乗根の有理化は分母の項数が1つの場合は「3乗すると中身の数になる」ことを利用する。
- 分母の項数が2つの場合は「3乗の和・差」を利用する。
- 分母の項数が3つの場合は一般に解くのは難しく、特定の形が出題されやすい。
- \(a^2 \mp ab + b^2\)の形ならそのまま3乗の和・差を利用、因数分解できる形なら因数分解してから利用、\(a\sqrt[3]{n^2}+b\sqrt[3]{n}+c\)の形なら掛け算に\(-3abn\)を追加して利用する。
- ある値が有理数かどうかを判断するために、その値を解にもつ方程式を考えることがある。
- 整数係数\(n\)次方程式の有理数解の候補は\(\pm\dfrac{(\text{定数項の約数})}{(\text{最高次の係数の約数})}\)のみ