1次不等式・絶対値と場合分け
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この記事では1次不等式や絶対値を含む方程式・不等式の解き方を解説します。また、様々な場面で利用される「場合分け」という考え方を紹介します。集合と命題分野の知識が活きてくるのでまだ見てない人は是非そちらも見てみてください。
目次
1. この記事を読むのに必要な前提知識
目次この記事で出てくる用語の解説とそれを詳しく扱っている記事へのリンク集です。
「2の倍数である」と「偶数である」のように2つの条件が数学的に同じ意味を持つとき「2つの条件は同値である」という。 また、もとの条件と同値な条件に変形することを同値変形という。 方程式や不等式を解くことは与えられた条件と同値な最も簡単な形(\(x= {}\)〇〇など)の条件を答えることだと捉えることができる。
2. 等式・不等式の性質と場合分けの使い方
目次方程式や不等式を解くにあたり、等式・不等式の性質を見ていきます。 等式の性質は中学数学ですでに勉強しましたが、同値変形を意識してもう一度、確認します。 等式・不等式それぞれの性質を対比させながら頭に入れましょう。
- \(A=B \iff A+C=A-C\)
- \(A=B \text{かつ} C \neq 0 \iff AC=BC \text{かつ} C \neq 0\)
- \(AB=0 \iff A=0 \text{または} B=0\)
補足:この性質は複素数で考えたときも成り立ちます。
1番は「両辺に同じものを足したり引いたりしても等号は成り立つ」ことを同値を使って表したものになります。これはイメージ通りだと思います。 一方、2番は「両辺に同じものを掛けたり割ったりしても等号は成り立つ」ことを表したものですが、\(C \neq 0\)がポイントです。
数学では0で割ってはいけないのでわざわざ強調することでもないように思えます。 しかし、高校数学からは文字式を多く扱うので、今までは「両辺に2を掛ける」や「両辺を3で割る」のように具体的な数だったものが、 「両辺に\(x+1\)をかける」や「両辺を\(x\)で割る」のように文字式で両辺を乗除する場面が出てきます。 このときに\({} \neq 0\)の条件が効いてきます。
この条件を忘れると同値性が崩れて正しい答えが得られないので気をつけましょう。
最後に3番は第2回の「因数分解の意義と考え方」でも紹介したように、方程式を解くときはもちろん、あらゆる場面で重要な同値変形です。 この性質から\(AB=0\)という条件をより次数の低く(厳密には\(AB\)の次数以下)、扱いやすい\(A=0\)または\(B=0\)という条件に言い換えられます。(一般的に式は次数の小さい方が扱いやすい) 2次方程式が因数分解できると簡単に解けるのも、この性質により2次から1次へと次数の下がった方程式を考えれば良くなるためです。
続いて、不等式の性質を見ていきます。
- \(A < B \iff A+C < B+C\)
- \(A < B \text{かつ} C > 0 \iff AC < BC \text{かつ} C >0\)
- \(A < B \text{かつ} C < 0 \iff AC > BC \text{かつ} C <0\)
- \(AB > 0 \iff \begin{cases}A >0\\B >0\end{cases} \text{または} \begin{cases}A <0\\B <0\end{cases}\)
- \(AB < 0 \iff \begin{cases}A >0\\B <0\end{cases} \text{または} \begin{cases}A <0\\B >0\end{cases}\)
補足1:1,4,5のすべて及び2,3のCの条件以外の不等号に等号を付けたものも同値が成り立ちます。
補足2:不等式については、この性質を満たす関係を作れないので複素数では定義しません。
たくさん出てきましたが、2番と3番・4番と5番はそれぞれペアで考えましょう。 すると、大きく3つの性質と見ることができます。 そして、この3つは等号の性質に対応しています。
1番は等式の性質と全く同じです。「両辺に同じものを足したり引いたりしても大小関係は変わらない」ことを表しています。 注目するべきは2番と3番です。等式の場合と同様に\(C \neq 0\)の場合を考えていますが、さらに\(C\)の正負によって場合分けされています。
日本語に訳して考えてみましょう。まず、2番は「両辺に同じ正の実数を掛けたり割ったりしても大小関係は変わらない」という意味です。 それに対して、3番は「両辺に同じ負の実数を掛けたり割ったりすると、大小関係が逆転する」という意味になります。 つまり、不等式の向きが逆になります。これを押さえておきましょう。
4番と5番は1次不等式ではあまり出てきませんが、2次不等式など、高次の不等式を扱う場面で役立ちます。 理由としては等式の性質で説明したように次数の下がった式を考えれば良くなるためです。
ところで2番と3番では\(C\)の正負によって結果が変わりましたが、このように状況によってその後の処理が変わるとき、場合分けという操作をします。 中学数学ではあまり登場しない考え方なのでまとめておきます。
ある条件によってその後の処理(計算)が変わるとき、処理が同じになるものはまとめて考え、逆に処理が異なるものは区別して考えます。 この操作を場合分けと呼びます。実際に使うときの流れは次の通りです。
- 処理が異なるものを区別して場合分けする
- 各場合について処理(計算)する
- 出てきた答えが場合分けの条件に合うか確認する
- 全パターンを考察したか確認する
3番がイメージしにくいかもしれませんが、例えば「\(x > 0\)」の場合について考えていたのに「\(x=-1\)」という答えが出てきたときは、場合分けの条件を満たしていないので解として不適となります。 記事の後半の例題2 絶対値の処理から早速出てきます。
複雑な問題では場合分けの考え方は有効で、正しい場合分けと考察は部分点にも繋がります。 どう分けるか迷ったときは処理が同じになるものはまとめて、異なるものは区別するという感覚を思い出してみてください。
ところで、不等式にはいくつか気を付けたい性質があるので、それらを紹介します。
-
\(a < b \text{かつ} c < d \implies a+c < b+d\)
注:\(a < b \text{かつ} c < d \implies a-c < b-d\)は間違い - \(a \leqq b \iff a < b \text{または} a=b\)
1番は\(\iff\)ではなく\(\implies\)であることに加えて引き算の場合は成り立たないこと、2番は「または」に注意しましょう。 順番に解説していきます。
まず、1番について「大きいもの同士・小さいもの同士を足せば大小関係は変わらない」ことは正しいです。しかし、引き算では間違いです。 これを確かめるために不等式の性質3を使い、\(-1\)倍してから足した場合と比べてみましょう。
\(c < d\)の両辺を\(-1\)倍すると、
\[-d < -c \text{(ここで\(c\)と\(d\)の位置が入れ替わることに注目)}\]
\(a < b\)と\(-d < -c\)の各辺を足し合わせると、
\[a-d < b-c\]
これが正しい答えとなります。うっかりそのまま各辺を引き算しないように注意しましょう。
次に2番についてなぜ「または」を強調したかというと、\(x \geqq a\)のときに\(x\)の最小値が\(a\)とは限らないからです。 「え?」と思った人は逆を考えているかもしれません。「\(x\)の最小値が\(a\)であるならば\(x \geqq a\)」は成り立ちます。 高校数学では特に「相加相乗平均(準備中)」でこのことが重要になります。もし興味のある人はリンク先を参照してください。
ここでは相加平均・相乗平均の関係以外の誤答例を参考として載せておきます。
次の問題を考えます。
問題「\(-1 \leqq x+y \leqq 1\)かつ\(-1 \leqq x-y \leqq 1\)のときに\(2x+y\)の最大値を求めてください。」
この問題は「線形計画法」と呼ばれる手法を使って解くことが多いです。線形計画法について詳しく知りたい人は「線形計画法(準備中) 」をご覧ください。 ここでは与えられた不等式から\(2x+y\)を作り出す作戦で解いた場合を見ていきます。
\(-1 \leqq x+y \leqq 1\)……①, \(-1 \leqq x-y \leqq 1\)……②とします。\((\text{①} + \text{②}) \div 2\)より
\[-1 \leqq x \leqq 1\cdots\cdots\text{①’}\]
不等式同士の引き算は先程のことに気を付けて、\(\{\text{①}+\text{②} \times (-1)\} \div 2\)より
\[-1 \leqq y \leqq 1\cdots\cdots\text{②’}\]
\(\text{①’} \times 2 + \text{②’}\)より
\[-3 \leqq 2x+y \leqq 3\]
なので最大値は3(?)
不等式の性質通りに進めているので\(-3 \leqq 2x+y \leqq 3\)までは合っています。問題はその直後の「なので」です。 ここで、\(2x+y \leqq 3\)だからといって最大値が3であるとはいえません。 実際、\(2x+y=3\)となるのは①’,②’から考えて、\(x=1\)かつ\(y=1\)のときですが、これは\(x+y \leqq 1\)と矛盾しています。
ところで今回出てきた不等式の形は「必要条件と十分条件・命題の証明方法 (後編)」の例題4の(5)と同じで、 座標平面を使って考えると帯状の領域になると解説した形です。 そこで、この座標平面を使って\(\text{「}-1 \leqq x+y \leqq 1\)かつ\(-1 \leqq x-y \leqq 1\text{」}\)と\(\text{「}-1 \leqq x \leqq 1\)かつ\(-1 \leqq y \leqq 1\text{」}\)を比べてみましょう。
(座標平面の図載せる)
2つの図を見比べると条件を満たす領域が変わってしまっています。 このように、複数の不等式を扱うときは数式だけで考えると同値が崩れてしまうので基本的に数直線や座標平面を利用して考えます。 この方法については次回の記事「連立方程式・不等式と「変数」・「定数」 」で詳しく解説します。
ちなみにこの問題の答えは2です。(\(x=1\)かつ\(y=0\)のとき)
ところで「\(x \geqq a\)のときに\(x\)の最小値が\(a\)とは限らないなら、\(-1 \leqq x+y \leqq 1\)の最小値が\(-1\)、最大値が\(1\)とは限らないのでは?」と思った人はかなり鋭いです。 そうなんです、実はこの問題文はずさんです。もっと言えば\(x+y\)が\(-1\)から\(1\)の間の数をすべてとりうるかも不明です。
なので、正しくは「\(x+y\)が\(-1 \leqq x+y \leqq 1\)の範囲を動くとき」や「\(-1 \leqq x+y \leqq 1\)を満たす点\((x,y)\)全体からなる集合」などと表現します。 回りくどいので単に\(-1 \leqq x+y \leqq 1\)と書いてあることもありますが……
このように、不等式と最大値・最小値ととりうる値には注意が必要です。(とりうる値がわかれば最大値・最小値がわかり、最大値・最小値がわかれば不等式が導けるが、それぞれ逆は不可。) この点が気になる人は「関数・グラフの基本とグラフの平行移動・対称移動」の「補足|関数の最大値・最小値ととりうる値」をご覧ください。
ここまでの知識を使って1次方程式・不等式の例題を解いてみましょう。
不等式の性質を確認しながら解いていきます。
両辺に\(5\)を足して
\[3x < 12\]
両辺を\(3( > 0)\)で割って
\[x < 4\]
したがって、答えは\(x < 4\)です。
慣れていないと、不等号が2つあって困惑するかもしれません。落ち着いて解いていきましょう。
各辺から\(7\)を引いて
\[-6 \leqq -2x < -4\]
各辺を\(-2\)\((< 0)\)で割って
\[2 < x \leqq 3 \quad \text{(\(<\)と\(\leqq\)にも注意)}\]
したがって、答えは\(2 < x \leqq 3\)です。
両辺を\(a\)で割る……前に\(\neq 0\)を確認しましょう。
[1] \(a \neq 0\)のとき
両辺を\(a\)で割って
\[x=\dfrac{b}{a}\]
[2] \(a=0\)のとき
元の方程式に代入して考えます。\(0 \cdot x = b\)より、\(b\)が\(0\)であるかないかで答えが変わります。
\(b=0\)のとき\(0 \cdot x = 0\)より、\(x\)がどんな数であってもこの方程式を満たします。 逆に\(b \neq 0\)のとき\(0 \cdot x = b\)より、\(x\)がどんな数であってもこの方程式を満たしません。
以上から
\[\begin{cases} a \neq 0 \text{のとき} & x=\dfrac{b}{a}\\[0.7em] a=b=0 \text{のとき} & \text{解は任意の数}\\[0.7em] a=0\text{かつ}b \neq 0 \text{のとき} & \text{解は存在しない} \end{cases}\]
となります。
補足:このように方程式の解が無数にある(=定まらない)場合を「不定」、解が存在しない場合を「不能」といいます。
\(a^2\)とありますが、\(x\)について見れば1次不等式です。順番に解いていきましょう。
\(x\)について整理して
\begin{align} &(a-1)x < a^2-a\\[0.7em]&(a-1)x < a(a-1) \end{align}
両辺を\((a-1)\)で割る……前に場合分けをします。
[1] \(a-1 > 0\)のとき、つまり\(a > 1\)のとき
\[x < a\]
[2] \(a-1=0\)のとき、つまり\(a=1\)のとき
\(0 \cdot x < 0\)より、解は存在しません。
[3] \(a-1 < 0\)のとき、つまり\(a < 1\)のとき
\[x > a\]
したがって
\[\begin{cases} a > 1 \text{のとき} & x < a\\[0.7em] a=1 \text{のとき} & \text{解は存在しない}\\[0.7em] a < 1 \text{のとき} & x > a \end{cases}\]
が答えになります。
- \(x < 4\)
- \(2 < x \leqq 3\)
- \(\begin{cases} a \neq 0 \text{のとき} & x=\dfrac{b}{a}\\[0.7em] a=b=0 \text{のとき} & \text{解は任意の数}\\[0.7em] a=0\text{かつ}b \neq 0 \text{のとき} & \text{解は存在しない} \end{cases}\)
- \(\begin{cases} a > 1 \text{のとき} & x < a\\[0.7em] a=1 \text{のとき} & \text{解は存在しない}\\[0.7em] a < 1 \text{のとき} & x > a \end{cases}\)
続いて絶対値の性質を見ていきます。
3. 絶対値の性質
目次絶対値記号が出てきたら絶対値を外し、今まで見てきたような絶対値を含まない形に直します。 その外し方として基本になるのは次の考え方です。
\(A \geqq 0\)のとき\(|A|=A,\)
\(A < 0\)のとき\(|A|=-A\)
絶対値の定義に立ち戻った考え方です。場合分けをするので時間はかかりますが、理論上すべての問題に使えます。まずはこれを押さえましょう。
この一般的な外し方以外にも特別な形をしていた場合、絶対値が「数直線上での原点からの距離を表す」ことに注目してより簡単に外せることがあります。それらを見ていきましょう。
- \(|A|=B \iff B \geqq 0 \text{かつ} A= \pm B\)
- \(|A|=|B| \iff A= \pm B\)
- \(|A| < B \iff -B < A < B\)
- \(|A| >B \iff A < -B \text{または}B < A\)
補足:3,4は等号が付いてもいいです。また、\(B \geqq 0\)という条件は必要ありません。
問題によってはこれらの同値変形を使うことで、場合分けをしなくて済むのでより簡単に速く解けることがあります。ぜひ覚えておきましょう。
また、補足に書いたように3,4で\(B \geqq 0\)という条件は必要ありませんが、この点に気になった人は注意深く勉強していると思います。 \(B\)が負の場合を確かめておくと3はどちらも条件を満たすものが存在せず、逆に4はどちらもすべて条件を満たすのでそれぞれきちんと同値になっています。
それでは例題を通して使っていきましょう。
絶対値を一般的な方法で外したときに場合分けが発生しますが、そのとき場合分けの使い方で紹介した「3. 出てきた答えが場合分けの条件に合うか確認する」を使います。 忘れやすいので注意しましょう。
「特殊な絶対値の外し方」の形ではないので、場合分けによって絶対値を外します。絶対値記号の中身が\(0\)になる値が場合分けの境界になります。 これは絶対値記号が複数ある場合も同じです。
今回の場合\(|x|\)は\(x=0\)、\(|x+1|\)は\(x=-1\)のとき中身が\(0\)になるので、場合分けは『[1] \(x < -1\)のとき [2] \(-1 \leqq x < 0\)のとき [3] \(0 \leqq x\)のとき』の3つになります。
[1] \(x < -1\)のとき
\(x < 0\)かつ\(x+1 < 0\)になるので
\begin{align} -x-(x+1)&=5\\[0.7em]-2x-1&=5\\[0.7em]x&=-3\\[0.7em] \end{align}
となります。これは\(x < -1\)を満たしています。
[2] \(-1 \leqq x < 0\)のとき
\(x < 0\)かつ\(x+1 \geqq 0\)になるので
\begin{align} -x+(x+1)&=5\\[0.7em]1&=5\\[0.7em] \end{align}
となります。この方程式を満たす\(x\)は存在しません。
[3] \(0 \leqq x\)のとき
\(x \geqq 0\)かつ\(x+1 \geqq 0\)になるので
\begin{align} x+(x+1)&=5\\[0.7em]2x+1&=5\\[0.7em]x&=2\\[0.7em] \end{align}
となります。これは\(0 \leqq x\)を満たしています。
以上から、答えは\(x=-3,2\)となります。
場合分けのときに解答の\(<\)を\(\leqq\)に変えて、『[1] \(x \leqq -1\)のとき [2] \(-1 \leqq x \leqq 0\)のとき [3] \(0 \leqq x\)のとき』としたり、 逆に\(\leqq\)を\(<\)に変えて、『[1] \(x < -1\)のとき [2] \(-1 < x < 0\)のとき [3] \(0 < x\)のとき』としたりするのは間違いでしょうか。
答えを言うと、\(<\)を\(\leqq\)に変えるのは間違いではなく、\(\leqq\)を\(<\)に変えるのは間違いです。理由を説明します。
場合分けをするときは処理が同じものをまとめますが、そのときにあるケースが複数の場合に含まれるのは問題ありません。 例えば『[1] \(x \leqq -1\)のとき [2] \(-1 \leqq x \leqq 0\)のとき [3] \(0 \leqq x\)のとき』と場合分けしたとき、\(x=-1\)は[1]と[2]の両方のケースに含まれていますが、\(x+1=0\)より「\(-x-(x+1)=5\)」とも「\(-x+(x+1)=5\)」とも考えることができます。 なので、\(<\)を\(\leqq\)に変えても問題ありません。
逆に、\(\leqq\)を\(<\)に変えてしまうと、\(x=-1,0\)の場合を解答していないことになります。よって、この場合は不正解となります。
この記事では、『\(A \geqq 0\)のとき\(|A|=A,\) \(A < 0\)のとき\(|A|=-A\)』に従って、\(<\)と\(\leqq\)を使い分けています。
注:数A「場合の数」の問題や第7回の「集合と命題を学ぶ理由と集合・命題・条件の基本」の例題1のように数を数えるときは、あるケースが複数の場合に含まれてしまうと二重カウントすることになるので、互いに「排反」になるように分けるか二重カウントを引き算するなど注意しましょう。 「排反」の意味や場合の数について詳しく知りたい方は「場合の数・排反(準備中)」をご覧ください。
「\(|A|=B \iff B \geqq 0 \text{かつ} A= \pm B\)」を使うと速く解けます。\(B\)が数字のときは、\(0\)以上であるかを確認して使いましょう。
\begin{align} ||x-1|+4|&=7\\[0.7em]|x-1|+4&=\pm7\\[0.7em]|x-1|&=-4\pm7\\[0.7em]|x-1|&=3,-11\text{(\(3\)または\(11\))}\\[0.7em] \end{align}
ここでもう一度「\(|A|=B \iff B \geqq 0 \text{かつ} A= \pm B\)」が使えます。\(3\)または\(11\)なので、場合分けして個別に調べましょう。
[1] \(|x-1|=3\)のとき
\begin{align} |x-1|&=3\\[0.7em]x-1&=\pm3\\[0.7em]x&=1\pm3\\[0.7em]x&=4,-2\\[0.7em] \end{align}
[2] \(|x-1|=-11\)のとき
\(-11 < 0\)より、この方程式を満たす\(x\)は存在しません。
以上から、答えは\(x=4,-2\)となります。
\(B\)が数字のときは『\(B \geqq 0\)』の条件の存在感がありませんでしたが、数字でないとき、つまり、文字が含まれる場合はこの条件が前面に出てきます。
例えば、本問が\(||x-1|+4|=2x\)だった場合
\(|x-1|+4=±2x\)かつ\(2x \geqq 0\)
となります。このように、数字のときは\(0\)以上であるかを確認するだけでしたが、文字が含まれると条件として効いてくるので注意しましょう。ちなみにこの問題の答えは\(x=3\)です。
絶対値記号がたくさんありますが、全体を見ると『\(|A|=|B| \iff A= \pm B\)』が使えます。
\begin{align} ||x-8|-|x+2||&=|5x-3|\\[0.7em]|x-8|-|x+2|&=\pm(5x-3)\\[0.7em] \end{align}
ここからは特殊な形になっていないので(1)と同様に場合分けをして地道に絶対値を外していきます。 絶対値の中身が\(0\)になる値に注目すると、『[1] \(x < -2\)のとき [2] \(-2 \leqq x < 8\)のとき [3] \(8 \leqq x\)のとき』の3つに場合分けできます。
[1] \(x < -2\)のとき
\(x-8 < 0\)かつ\(x+2 < 0\)になるので
\begin{align} -(x-8)+(x+2)&=±(5x-3)\\[0.7em]10&=±(5x-3)\\[0.7em] \end{align}
\(10=5x-3\)と\(10=-(5x-3)\)を解くと、それぞれ\(x=\dfrac{13}{5},-\dfrac{5}{7}\)となりますが、どちらも\(x < -2\)を満たさないので不適です。
[2] \(-2 \leqq x < 8\)のとき
\(x-8 < 0\)かつ\(x+2 \geqq 0\)になるので
\begin{align} -(x-8)-(x+2)&=±(5x-3)\\[0.7em]-2x+6&=±(5x-3)\\[0.7em] \end{align}
\(-2x+6=5x-3\)と\(-2x+6=-(5x-3)\)を解くと、それぞれ\(x=\dfrac{9}{7},-1\)となり、どちらも\(-2 \leqq x < 8\)を満たします。
[3] \(8 \leqq x\)のとき
\(x-8 \geqq 0\)かつ\(x+2 \geqq 0\)になるので
\begin{align} (x-8)-(x+2)&=±(5x-3)\\[0.7em]-10&=±(5x-3)\\[0.7em] \end{align}
\(-10=5x-3\)と\(-10=-(5x-3)\)を解くと、それぞれ\(x=-\dfrac{5}{7},\dfrac{13}{5}\)となりますが、どちらも\(8 \leqq x\)を満たさないので不適です。
したがって、答えは\(x=\dfrac{9}{7},-1\)となります。
- \(x=-3,2\)
- \(x=4,-2\)
- \(x=\dfrac{9}{7},-1\)
特殊な絶対値の外し方の3番と4番については 複数の不等式について詳しく扱う次回の記事で例題を見ていきます。
4. まとめと次回予告
目次まとめ
目次今回の内容をまとめると、
- 等式の乗除は\(\neq 0\)、不等式の乗除は正負に気をつける。
- \(AB=0 \iff A=0 \text{または} B=0 \quad\) \(AB > 0 \iff \begin{cases}A >0\\B >0\end{cases} \text{または} \begin{cases}A <0\\B <0\end{cases} \quad\) \(AB < 0 \iff \begin{cases}A >0\\B <0\end{cases} \text{または} \begin{cases}A <0\\B >0\end{cases}\)
- 条件によって処理が変わるときは場合分け、処理が同じになるものをまとめる。
- 場合分けしたら、出てきた答えが場合分けの条件に合うか確認する。
- \(A \geqq 0\)のとき\(|A|=A,\) \(A < 0\)のとき\(|A|=-A\)
次回予告
目次次回は複数の不等式を扱う方法を解説し、連立不等式を解いていきます。カギとなるのは「数直線や座標平面を使った図示」です。また、中学校で学んだ連立方程式の代入法や加減法について同値を意識して見直します。
そして、例題1で出てきた「定数」という言葉ですが、「変数」や「未知数」とどう違うのか意外とわかりにくいので扱う文字が増えてきたこのタイミングで解説します。