対称式を利用した式の値の求め方

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この記事では、高校数学の式の値問題頻出パターンである対称式・次数下げ・比例式の3つを紹介した後に、そのうちの1つである対称式を利用した問題について解説します。

目次

1. 中学数学の式の値問題との違い

目次

式の値を求める問題は中学数学でも出てきます。例えば、\(a=3,\) \(b=-2\)のとき、 \(3(a+2b)-2(2a+b)\)の値は?というような問題です。 この問題を解くときはまず式を整理して、次に\(a,\ b\)の値を代入します。

一方、高校数学では素直に代入するだけの問題は少なく、「各文字の値を求めずに工夫して計算する」場合がほとんどです。 例えば、先程の問題では\(a\)と\(b\)の値が与えられていましたが高校数学ではこのような例は少ないです。

ではどのように工夫すればよいのでしょうか。よく出題されるパターンは次の3つです。

式の値問題頻出3選
  1. 対称式
  2. 次数下げ
  3. 比例式

今回の記事では対称式を利用する問題を扱います。次数下げは次回、比例式は「比例式(準備中)」で解説するので気になる人はこちらをご覧ください。

対称式について詳しく知りたい人は「対称式・交代式まとめ(準備中)」をどうぞ

2. 2文字の対称式

目次

2文字の対称式を基本対称式で表す

目次

対称式の復習です。対称式とはどの2つの文字を交換しても、元の式と同じになる多項式のことで、性質として基本対称式で1通りに表すことができます。

この性質を利用し、条件式と値を求める式がともに対称式のときは基本対称式を軸にして考えます。よく出題される2文字の対称式を基本対称式で表した一覧がこちらです。

2文字の対称式の変形一覧
  1. \(x^2+y^2=(x+y)^2-2xy\)
  2. \(x^3+y^3=(x+y)^3-3xy(x+y)\)
  3. \((x-y)^2=(x+y)^2-4xy\)

1, 2の覚え方ですが、\(n\)乗の和は和の\(n\)乗から余分な部分を引きます。このように対称式の変形では、展開すると元の式の項が出てくるものを考えて、そのあとに余分な部分を引く考え方をよく使います。

3について、左辺の中に\(x-y\)が含まれていることがポイントです。2文字の対称式では基本対称式の\(x+y,\) \(xy\)に加えて、\(x-y\)も使って考える場面が多いので覚えておきましょう。

さらに、1, 3の式は右辺にあるものを求めるときにもよく使います。どういうことかというと、1を\(xy\)を求めるために利用したり、3を\(x+y\)を求めるために利用したりします。このあと例題を見ながら確認していきます。

例題1 2文字の対称式の値
目次

\(a+b=5,\) \(a^2+b^2=21\)のとき、次の式の値を求めてください。(ただし、\(a>b\))

  1. \(ab\)
  2. \(a^3+b^3\)
  3. \(a^5+b^5\)
  4. \(a-b\)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題1の(1)の解説
例題1

1の変形を利用して\(ab\)を求めるパターンです。

\(a^2+b^2=(a+b)^2-2ab\)より

\begin{align} ab=&\frac{1}{2}\{(a+b)^2-(a^2+b^2)\}\\[0.7em] =&\frac{1}{2}(5^2-21)\\[0.7em] =&2 \end{align}

これで基本対称式\(a+b,\) \(ab\)の値が求まりましたね。

例題1の(2)の解説
例題1

基本対称式の値が分かったので2の変形を利用して値を求めましょう。

\begin{align} &a^3+b^3\\[0.7em] =&(a+b)^3-3ab(a+b)\\[0.7em] =&5^3-3 \cdot 2 \cdot 5\\[0.7em] =&95 \end{align}

別解|因数分解公式を利用

\(a^2+b^2\)の値がわかっているので、因数分解公式を利用しても良いです。

\begin{align} &a^3+b^3\\[0.7em] =&(a+b)(a^2-ab+b^2)\\[0.7em] =&5\times(21-2)\\[0.7em] =&95 \end{align}

例題1の(3)の解説
例題1

\(5\)乗の和は変形一覧にありませんでした。 \(2,\ 3\)乗の場合から類推すると、和の\(5\)乗から余分な部分を引く方法が考えられますが、項が多くて計算量が膨大になりそうです。

そこで、今までに値がわかっている式を使って\(a^5+b^5\)を作り出し、余分な部分を引くことを考えます。

\begin{align} &a^5+b^5\\[0.7em] =&(a^2+b^2)(a^3+b^3)-a^2 b^3-b^2 a^3\\[0.7em] =&(a^2+b^2)(a^3+b^3)-(ab)^2(a+b)\\[0.7em] =&21\times95-2^2\times5\\[0.7em] =&1975 \end{align}

この問題を基本対称式にまで直して計算した例を載せておくので気になる人は見てみてください。

参考|基本対称式で表した場合

\begin{align} &a^5+b^5\\[0.7em]=&(a+b)^5-5a^4 b-10a^3 b^2-10a^2 b^3-5ab^4\\[0.7em]=&(a+b)^5-5ab(a^3+2a^2 b+2ab^2+b^3)\\[0.7em]=&(a+b)^5-5ab\{(a+b)^3-a^2 b-ab^2\}\\[0.7em]=&(a+b)^5-5ab\{(a+b)^3-ab(a+b)\}\\[0.7em]=&5^5-5 \cdot 2(5^3-2 \cdot 5)\\[0.7em]=&1975 \end{align}

実際に計算してみると見た目以上にハードです。また、この解答では\((a+b)^5\)を計算する必要があります。 この計算については「二項定理・多項定理(準備中)」をご覧ください。

例題1の(4)の解説
例題1

3の変形を使って求めましょう。ここで、\(a>b\)の条件を使います。

\begin{align} &(a-b)^2\\[0.7em] =&(a+b)^2-4ab\\[0.7em] =&5^2-4\times2\\[0.7em] =&17 \end{align}

\(a>b\)より、\(a-b\)は正なので\(a-b=\sqrt{17}\)となります。

例題1の解答
例題1
  1. \(ab=2\)
  2. \(a^3+b^3=95\)
  3. \(a^5+b^5=1975\)
  4. \(a-b=\sqrt{17}\)

続いて1文字なのに2文字の対称式の考え方を使う問題を見てみます。

例題2 2文字の対称式に帰着させる式の値
目次

\(x-\dfrac{3}{x}=2\sqrt{2}\)のとき、次の式の値を求めてください。(ただし\(x < 0\))

  1. \(x+x^2+x^3-\dfrac{3}{x}-\dfrac{9}{x^2}-\dfrac{27}{x^3}\)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題2の(1)の解説
例題2

対称式どころか文字が1つしかありません。しかし、\(x\)の\(1\)次の項と\(-1\)次の項をペアとして見るとどうでしょうか。 試しに\(y=\dfrac{3}{x}\)とおいてみると\(xy=3\)となり、対称式の利用が見えてきます。ペアとして見た理由は積が定数になるからです。

そうなると、基本対称式\(x+y\)\(\left(=x+\dfrac{3}{x}\right)\)の値がほしいところです。ここで「2文字の対称式の変形一覧」の3番を思い出しましょう。 問題文で\(x-y\left(=x-\dfrac{3}{x}\right)\)の値が与えられているのでこれを利用すれば求められそうです。

\begin{align} &\left(x+\frac{3}{x}\right)^2\\[0.7em] =&\left(x-\frac{3}{x}\right)^2+4x\cdot\frac{3}{x}\\[0.7em] =&20 \end{align} \[x < 0\text{より、}x+\frac{3}{x}=-2\sqrt{5}\]

基本対称式に対応する\(x+\dfrac{3}{x}\)と\(x\cdot\dfrac{3}{x}\)さらに\(x-\dfrac{3}{x}\)の値がわかったのでこれらの値を利用して解いていきます。 「基本対称式の値を求める→対称式を基本対称式で表して、求めた値を代入する」という流れを掴みましょう。

まず、次数を見てペア分けします。すると、\((x-y)+\)\((x^2-y^2 )+\)\((x^3-y^3)\)の形が見えてくるので、あとは上の3つの値が使えるように式を変形しましょう。

\begin{align} &x+x^2+x^3-\frac{3}{x}-\frac{9}{x^2}-\frac{27}{x^3}\\[0.7em] =&\left(x-\frac{3}{x}\right)+\left(x^2-\frac{9}{x^2}\right)+\left(x^3-\frac{27}{x^3}\right) \tag{1}\\[2.4em] &x^2-\frac{9}{x^2}\\[0.7em] =&\left(x+\frac{3}{x}\right)\left(x-\frac{3}{x}\right)\\[0.7em] =&-2\sqrt{5} \cdot 2\sqrt{2}=-4\sqrt{10} \tag{2}\\[2.4em] &x^3-\frac{27}{x^3}\\[0.7em] =&\left(x-\frac{3}{x}\right)^3+3x \cdot \frac{3}{x} \left(x-\frac{3}{x}\right)\\[0.7em] =&(2\sqrt{2})^3+9\cdot 2\sqrt{2}\\[0.7em] =&34\sqrt{2} \tag{3}\\[2.4em] \end{align} \[x-\frac{3}{x}=2\sqrt{2},\ \text{(2), (3)を(1)に代入して}\] \begin{align} &x+x^2+x^3-\frac{3}{x}-\frac{9}{x^2}-\frac{27}{x^3}\\[0.7em] =&2\sqrt{2}+(-4\sqrt{10})+34\sqrt{2}\\[0.7em] =&36\sqrt{2}-4\sqrt{10} \end{align}

例題2の解答
例題2
  1. \(36\sqrt{2}-4\sqrt{10}\)

3. 3文字の対称式

目次

3文字の対称式を基本対称式で表す

目次

それでは次に3文字の場合を見ていきましょう。

3文字の対称式の変形一覧
  1. \(a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)\)
  2. \(a^3+b^3+c^3=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc \)
  3. \(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}=\dfrac{ab+bc+ca}{abc}\)

4は2文字のときの1, 2と同じように覚えることができます。補足としてもう一つの基本対称式\(abc\)の値を使わないことを頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

5は\(a^3+b^3+c^3-3abc\)の因数分解公式で\(-3abc\)を移項した形です。右辺に\(a^2+b^2+c^2\)が含まれているので、4を使ってこの値を求めてから使いましょう。

6は通分しただけですが、逆数の和は意外と初手が分かりづらいので載せておきました。

それでは3文字の場合の例題です。

例題3 3文字の対称式の値
目次

\(a+b+c=\sqrt{3}+1,\) \(ab+bc+ca=\sqrt{3}-2,\) \(abc=2\)のとき次の式の値を求めてください。

  1. \(a^2+b^2+c^2\)
  2. \(a^3+b^3+c^3\)
  3. \(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}\)
  4. \(\dfrac{1}{a^2} +\dfrac{1}{b^2} +\dfrac{1}{c^2}\)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題3の(1)の解説
例題3

4の変形をそのまま使います。

\begin{align} &a^2+b^2+c^2\\[0.7em] =&(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)\\[0.7em] =&(\sqrt{3}+1)^2-2(\sqrt{3}-2)=4+2\sqrt{3}-2\sqrt{3}+4\\[0.7em] =&8 \end{align}

例題3の(2)の解説
例題3

(1)で\(a^2+b^2+c^2\)の値を求めたので、5の変形を使って値を求めましょう。

\begin{align} &a^3+b^3+c^3\\[0.7em] =&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc\\[0.7em] =&(\sqrt{3}+1)\{8-(\sqrt{3}-2)\}+3 \cdot 2\\[0.7em] =&(\sqrt{3}+1)(10-\sqrt{3})+6\\[0.7em] =&7+9\sqrt{3}+6\\[0.7em] =&13+9\sqrt{3} \end{align}

例題3の(3)の解説
例題3

これも6の変形をそのまま使います。初手の通分さえわかれば簡単です。

\begin{align} &\frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}\\[0.7em] =&\frac{ab+bc+ca}{abc}\\[0.7em] =&\frac{\sqrt{3}-2}{2} \end{align}

例題3の(4)の解説
例題3

最後は変形一覧にない形が出てきました。なので、例題1の(3)のように基本対称式と今までに求めた式を使って表せるように変形しましょう。

\(\dfrac{1}{a^2} =\left(\dfrac{1}{a}\right)^2\)と考えることと、変形一覧を見て真似できないか考えてみることがカギとなります。

\begin{align} &\frac{1}{a^2}+\frac{1}{b^2}+\frac{1}{c^2}\\[0.7em] =&\left(\frac{1}{a}\right)^2+\left(\frac{1}{b}\right)^2+\left(\frac{1}{c}\right)^2\\[0.7em] =&\left(\frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}\right)^2-2\left(\frac{1}{ab}+\frac{1}{bc}+\frac{1}{ca}\right)\\[0.7em] =&\left(\frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}\right)^2-2\cdot \frac{a+b+c}{abc}\\[0.7em] =&\left(\frac{\sqrt{3}-2}{2}\right)^2-2\cdot\frac{\sqrt{3}+1}{2}\\[0.7em] =&\frac{7-4\sqrt{3}}{4}-\frac{4(\sqrt{3}+1)}{4}\\[0.7em] =&\frac{3-8\sqrt{3}}{4} \end{align}

\(\dfrac{1}{a^2} =\left(\dfrac{1}{a}\right)^2\)と考えることで4番の形が見えてきました。そして逆数の和が出てきたときに通分していることもポイントです。

補足|\(\dfrac{1}{a^2}+\dfrac{1}{b^2}+\dfrac{1}{c^2}={}\)\(\left(\dfrac{1}{a}\right)^2+\left(\dfrac{1}{b}\right)^2+\left(\dfrac{1}{c}\right)^2\)が負の数になるのはなぜ?

(4)をよく見てみると、\(\dfrac{1}{a^2}+\dfrac{1}{b^2}+\dfrac{1}{c^2}={}\)\(\left(\dfrac{1}{a}\right)^2+\left(\dfrac{1}{b}\right)^2+\left(\dfrac{1}{c}\right)^2\)と 2乗の和にもかかわらず、値が\(\dfrac{3-8\sqrt{3}}{4}<0\)で負の数になっています。ここに気づいた人は鋭いです。 実は\(a,b,c\)の値を求めてみると、その組には複素数という「2乗したら0以上になる実数」の世界を拡張した数が含まれています。 なので、2乗の和にもかかわらず、負の数になっています。

例題3の解答
例題3
  1. \(a^2+b^2+c^2=8\)
  2. \(a^3+b^3+c^3=13+9\sqrt{3}\)
  3. \(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}=\dfrac{\sqrt{3}-2}{2}\)
  4. \(\dfrac{1}{a^2} +\dfrac{1}{b^2} +\dfrac{1}{c^2}=\dfrac{3-8\sqrt{3}}{4}\)

4. まとめ

目次

今回の内容をまとめると、

  1. 高校数学の式の値問題は各文字の値を代入するのではなく、工夫して計算する問題がほとんど
  2. 条件式・値を求める式がともに対称式のときは基本対称式を軸にして考える
  3. 2文字の場合は\(x-y\)も使って考える
  4. 後半の問題は前の問題の答えを利用することがある。頻出は\(x^5+y^5\)
  5. 逆数の和はまず通分

5. この記事の関連・応用記事

目次

この記事の関連・応用記事の紹介とその記事へのリンク集です。

基本対称式から各文字の値を求める

対称式の値を求めるときはわざわざ\(x\)や\(y\)の値を求めませんでしたが、これらの文字の値を個別に求めることもできます。実は方程式の解と係数の関係を調べることで、基本対称式が登場する面白い関係を見つけることができます。 これにより各文字の値を求めることができます。数Ⅱの学習内容ですが、知っておくとかなり便利です。

解と係数の関係(準備中)
対称式×漸化式

例題1の(3)で\(a^5+b^5\)を求めるときに基本対称式にまで直すと計算量が多くなるので\(a^2+b^2\)と\(a^3+b^3\)の値を活用しました。 この方法を応用し、漸化式を使ってより機械的に大きな次数の対称式の値を求める方法を考えます。

対称式×漸化式
対称式×三角関数

対称式は三角関数とも相性が良く、今回紹介した対称式の値を求める考え方を応用することができます。 具体的には例題2で\(x\)と\(\dfrac{3}{x}\)をペアとして見たように\(\sin\theta\)と\(\cos\theta\)をペアとして見ることで対称式の形が出てきます。

三角関数の式の値(準備中)

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