2次関数、絶対値・ガウス記号を含む関数のグラフ/グラフと方程式のつながり
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目次
1. この記事を読むのに必要な前提知識
目次この記事に出てくる用語の解説とそれを詳しく扱っている記事へのリンク集です。
「2の倍数である」と「偶数である」のように2つの条件が数学的に同じ意味を持つとき「2つの条件は同値である」という。 また、もとの条件と同値な条件に変形することを同値変形という。 (必要条件・十分条件についても以下のリンク参照)
「2の倍数である」と「偶数である」のように2つの条件が数学的に同じ意味を持つとき「2つの条件は同値である」という。 また、もとの条件と同値な条件に変形することを同値変形という。 (必要条件・十分条件についても以下のリンク参照)
2. 2次関数のグラフ
目次$x$の2次式で表される関数を、$x$の2次関数といいます。中学数学では$y=ax^2$という特別なパターンのみを扱いましたが、高校数学ではより一般に$y=ax^2+bx+c$のグラフを考えます。
ただ、1次関数のときとは違い、そのままだとグラフの形がよく分かりません。なぜなら、$x$の値が変化すると、$ax^2$と$bx$の2つの項の値が変わってしまうからです。 そこで、$x$を含む項が1つになるように2次式$ax^2+bx+c$を$a(x-p)^2+q$の形に変形します。この変形を平方完成(英: completing the square)といいます。
\begin{align}&ax^2+bx+c\\[0.7em]={}&a\left(x^2+\dfrac{b}{a}x\right)+c\\[0.7em]={}&a\left(x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{b^2}{4a^2}\right)+c\\[0.7em]={}&a\left\{\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2}{4a^2}\right\}+c\\[0.7em]={}&a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2}{4a}+c\\[0.7em]={}&a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2-4ac}{4a}\end{align}
まず、$x$を含む項を$a$で括った後に、$(x-p)^2$の形に変形するために$\dfrac{b^2}{4a^2}$を足し引きします。 $\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$が作れれば、$x$を含む項を1つにまとめられたので、あとは見やすいように計算するだけです。
この平方完成と、前回のグラフの平行移動の知識を使うと、2次関数$y=ax^2+bx+c$のグラフの形がわかります。右辺を平方完成して、$-\dfrac{b^2-4ac}{4a}$を移項すると次のようになります。
\begin{align}&y+\dfrac{b^2-4ac}{4a} = a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2\\[0.7em]\end{align}
つまり、$y=ax^2+bx+c$のグラフは$y=ax^2$のグラフを$x$軸方向に$-\dfrac{b}{2a}$、$y$軸方向に$-\dfrac{b^2-4ac}{4a}$だけ平行移動した放物線です。 (グラフの平行移動の復習はこちらの記事へ「関数・グラフの基本とグラフの平行移動・対称移動」)
(グラフ載せる)
上のようにグラフが落とし穴のような形になる関数を下に凸、反対に屋根のような形になる関数を上に凸といいます。(グラフ自身についても同様に「下(上)に凸なグラフ」と表現することがあります。) 2次関数は$a > 0$のとき下に凸、$a < 0$のとき上に凸になります。
下に凸を「落とし穴のような」と表現しましたが、厳密には次のように定義されます。
任意の$x_1, x_2(x_1 \neq x_2)$について関数$f(x)$が
\begin{align}&f(tx_1+(1-t)x_2) \leqq tf(x_1)+(1-t)f(x_2) \quad (0 < t < 1)\\[0.7em]\end{align}
を満たすとき、$f(x)$は下に凸な関数(英: convex function)であるといいます。
同様に、任意の$x_1, x_2(x_1 \neq x_2)$について関数$f(x)$が
\begin{align}&f(tx_1+(1-t)x_2) \geqq tf(x_1)+(1-t)f(x_2) \quad (0 < t < 1)\\[0.7em]\end{align}
を満たすとき、$f(x)$は上に凸な関数(英: concave function)であるといいます。
式だけ見ると何を言っているのか見失いそうですが、$tx_1+(1-t)x_2$の形に注目すると、これは$0 < t < 1$のとき内分点を表します。 つまり、2点$(x_1, f(x_1)), (x_2, f(x_2))$を結ぶ線分を考え、その線分上の内分点
\begin{align}&(tx_1+(1-t)x_2,\ tf(x_1)+(1-t)f(x_2))\\[0.7em]\end{align}
の$y$座標が常に、この内分点と同じ$x$のときの関数$f(x)$の値$f(tx_1+(1-t)x_2)$以上(=下に凸)か以下(=上に凸)かを言っています。
(グラフ載せる)
この定義から結果的に下に凸なら落とし穴のような形、上に凸なら屋根のような形になります。 注意点として例えば定数関数$y=c$は下に凸でもあり、上に凸でもある関数です。下に凸と上に凸は排反(同時には満たさないこと)ではないことに気をつけましょう。 これを避けるために、
\begin{align}&f(tx_1+(1-t)x_2) < tf(x_1)+(1-t)f(x_2) \quad (0 < t < 1)\\[0.7em]\end{align}
のように等号を消して狭義の下に凸な関数を考えることもあります。(上に凸も同様)
また、一般の一変数関数$f(x)$についてその関数が下に凸か上に凸かそうでないかを判定するときは定義通り確かめるのではなく2階微分を使って、
\begin{align}&\text{下に凸} \iff f^{\prime\prime}(x) \geqq 0\\[0.7em]&\text{上に凸} \iff f^{\prime\prime}(x) \leqq 0\end{align}
という同値変形を使って求めることが多いです。 2次関数の2階微分は$2a$なので、このことから$a$の符号が下に凸か上に凸かを決定することが分かります。
そして英語表記を見るとわかるように上に凸な関数は凹関数とも呼ばれます。(concave=凹面の) つまり、下側から見て凹凸を判断します。なので、単に凸関数といった場合は"下"に凸な関数のことをいうので注意してください。 (凸関数・凹関数という呼び方が高校数学で使われることは少ないですが)
最後に、凸関数・凹関数は多変数関数に拡張することができます。凸関数・凹関数の定義は狭義の場合を含めて上と全く同じです。(詳しくは、$x_1$, $x_2$が実数から$n$項実ベクトルに変わったと見ればいい) さらに2階微分を使った判定方法は多変数関数になると、2階"偏"微分を並べた行列(ヘッセ行列)による判定へと拡張されます。
(補足) 細かい内容なので明記しませんでしたが、凸関数・凹関数の定義に内分点が登場することから、 そもそも関数がその内分点と同じ$x$で定義されていることが前提です。このとき、定義域は凸集合であるといいます。 つまり、下の図のような定義域はOUTです。
(図を載せる)
また、放物線にはその直線に対して線対称となるような直線を引くことができます。 この直線を軸、軸と放物線の交点を頂点と呼ぶので覚えておきましょう。 2次関数$y=ax^2+bx+c$の場合、軸は直線$x=-\dfrac{b}{2a}$、頂点は点$\left(-\dfrac{b}{2a}, -\dfrac{b^2-4ac}{4a}\right)$になります。
2次関数はグラフが放物線になる関数のひとつです。 放物線とは文字通り「物を放ったときの軌跡」なのですが、グラフを回転させても放物線と呼ぶので、2次関数以外にもグラフが放物線になる関数はあります。 このような関数やそもそも放物線の"定義"が気になる方は「(リンク:2次曲線(準備中))」をご覧ください。
ところで、$b^2-4ac$という形、どこかで見覚えがありませんか? 実は2次方程式の解の公式の導出にも平方完成が使われています。気になる人は下の参考をご覧ください。
中学数学ではひとまず丸暗記することが多い解の公式を導出してみます。 2次方程式を解く基本的なアイデアは$x$を含む項2つを1つにまとめることです。というわけで平方完成を活用しましょう。
2次方程式$ax^2+bx+c=0$について、左辺を平方完成すると、
\begin{align}&a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2-4ac}{4a}=0\\[0.7em]\end{align}
定数項を移項して両辺を$a$で割ると、
\begin{align}a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2&=\dfrac{b^2-4ac}{4a}\\[0.7em]\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2&=\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}\end{align}
平方根を考えて、解を求めると、
\begin{align}x+\dfrac{b}{2a}&=\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\[0.7em]x&=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\end{align}
見覚えのある式を導出することができました。
ここで、グラフを使って2次関数の係数の符号を判定する問題を紹介します。この問題を通して、2次関数のグラフに慣れていきましょう。
グラフが下に凸か上に凸かで$a$の符号がわかります。下に凸なので$a > 0$です。
$a$の符号がわかっていることをヒントにグラフの軸に注目します。
軸が$x > 0$にあるので、$-\dfrac{b}{2a} > 0$です。(1)の$a > 0$と合わせて考えると、$b < 0$となります。
微分を知っている人は$f'(0)=b$であることから$x=0$におけるグラフの傾きを見て、$b < 0$と答えてもいいです。
グラフのどこを見れば$c$の符号がわかるか考えます。$f(0)=c$であることから$x=0$のときの値を確認すると負なので、$c < 0$です。
$b^2-4ac$に見覚えはないでしょうか。この式は頂点の座標で登場しました。 2次関数のグラフの頂点の$y$座標は$-\dfrac{b^2-4ac}{4a}$であり、(1)から$a > 0$なので、$b^2-4ac > 0$となります。
まだ登場していない項目ですが、$b^2-4ac$が判別式であることに注目して、グラフが$x$軸と異なる2点で交わることから$b^2-4ac > 0$とする方法もあります。
$c$を考えたときと同様にどの値と結び付けられる考えます。すると、$f(1)=a+b+c$であることから$x=1$のときの値を確認すると正なので、$a+b+c > 0$です。
ここまでの流れから考えるとわかりやすいですが、初見では気づきにくいかもしれません。$b$の符号だけ負になっていることに注目しましょう。
$f(-1)=a-b+c$であることから$x=-1$のときの値を確認します。グラフでは明記されていませんが、ここで対称性を使います。
2次関数のグラフは軸に対して線対称なので、$x=-\dfrac{b}{2a}$から左右に同じ分だけ離れた2つの$x$について$y$の値は等しくなります。 (5)から$f(1)$の符号が正であることがわかっているので、対称性より$x=-\dfrac{b}{2a}$から$1$と反対側の負の方向に同じだけ離れた$x$を$\alpha$とすると、$f(\alpha)$も正になります。
さらに、$-1$は$0$を真ん中として$1$と対称な位置にあることから、$-\dfrac{b}{2a}$を基準にすると、$-1$の方が$1$よりも遠いです。 よって、$-1$の方が$\alpha$よりも遠いことになり、$f(-1)=a-b+c$の符号は正であることがわかります。
(6)までに求めたものを使う方法と、$2a+b$がグラフのどこに対応するかを考える方法があります。
まず、1つ目の方法は今までに登場した式から$2a+b$を作ることを考えます。 そのまま$a$を2倍して$b$を足し合わせると、$2 \times \text{(正)} + \text{(負)}$となって符号がわからないので、他の組み合わせを考えます。
$a$と$c$と$a+b+c$を使うと、$2a+b=a-c+(a+b+c)$となります。符号を調べてみると、$\text{(正)} - \text{(負)} + \text{(正)}$となるので答えは正であることがわかります。
次に2つ目の方法は微分を使います。$f'(1)=2a+b$であることから$x=1$のときのグラフの傾きを確認すると正なので、$2a+b > 0$です。 微分を知らないと使えませんが、逆に知っていれば一瞬で求めることができます。
- $a > 0$
- $b < 0$
- $c < 0$
- $b^2-4ac > 0$
- $a+b+c > 0$
- $a-b+c > 0$
- $2a+b > 0$
3. 絶対値を含む関数のグラフ
目次続いて絶対値を含む関数のグラフがどうなるか見ていきます。
$y=|f(x)|$のグラフ
目次はじめに関数$y=|f(x)|$のグラフを考えます。右辺全体に絶対値が付くもの全てについて次のことが成り立ちます。
関数$y=|f(x)|$のグラフは、$y=f(x)$のグラフの$x$軸より下側の部分を$x$軸に関して対称に折り返したもの
なぜこうなるのか説明します。$y=|f(x)|$のグラフを$y=f(x)$のグラフと比べて考えると、$f(x) \geqq 0$のときは絶対値の定義から$|f(x)|=f(x)$となるので2つのグラフは一致します。 しかし、$f(x) < 0$のときは$|f(x)|=-f(x)$となるので$y=|f(x)|$のグラフは$y=f(x)$のグラフを$x$軸に関して対称に折り返したものになります。 この2つを合わせると、『関数$y=|f(x)|$のグラフは、$y=f(x)$のグラフの$x$軸より下側の部分を$x$軸に関して対称に折り返したもの』であるといえます。
このように、$y=|f(x)|$のグラフは$y=f(x)$のグラフを補助として考えると簡単にかくことができます。 また、実際に問題を解くときも両方のグラフを考えると見通しが良くなることがあります。
ここで、先程学んだ2次関数のグラフの知識と合わせて例題を解いてみましょう。
2次関数のグラフをかきたいので平方完成をします。 ここではより効率的に計算するときの考え方を見ていこうと思います。
まず、手順通り$x^2$の係数で$x$を含む項をくくります。
\begin{align}&2x^2-5x+2=2\left(x^2-\dfrac{5}{2}x\right)+2\\[0.7em]\end{align}
この次がポイントです。かっこの中の$x$の係数、つまり$-\dfrac{5}{2}$を$2$で割った$-\dfrac{5}{4}$を使って、いきなり次の形に変形します。
\begin{align}&2\left(x^2-\dfrac{5}{2}x\right)+2=2\left\{\left(x-\dfrac{5}{4}\right)^2-\dfrac{25}{16}\right\}+2\\[0.7em]\end{align}
どこをショートカットしたかというと、中括弧の部分です。 平方完成を紹介したときは$\dfrac{b^2}{4a^2}$を足し引きしてから$\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$を作りましたが、実際に計算するときにこう考えると遅いです。 そこで、まず$\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$を無理矢理作ってからあとで誤差の$\dfrac{b^2}{4a^2}$を引くと捉えます。
やっている内容は同じですが、無駄に足し引きを考えない分、速く計算できます。 というわけで、$x^2$の係数でくくったら、かっこの中の$x$の係数を2で割って、$\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$を作ってしまいましょう。
あとは分配法則を使って、定数項をまとめるだけです。
\begin{align}&2\left\{\left(x-\dfrac{5}{4}\right)^2-\dfrac{25}{16}\right\}+2=2\left(x-\dfrac{5}{4}\right)^2-\dfrac{9}{8}\\[0.7em]\end{align}
より途中式を省略するなら$\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$を作った後に、すぐに誤差の$\dfrac{b^2}{4a^2}$を引かずに、頭の中で定数項を計算して、
\begin{align}&2x^2-5x+2\\[0.7em]={}&2\left(x^2-\dfrac{5}{2}x\right)+2\\[0.7em]={}&2\left(x-\dfrac{5}{4}\right)^2-\dfrac{9}{8} \quad \text{$\left(2 \times \left\{-\left(\dfrac{5}{4}\right)^2\right\} + 2 = -\dfrac{9}{8}\text{は頭の中で計算}\right)$}\end{align}
とするとより速く解けます。ただし、計算ミスが起こりやすくなるので時間があるならしっかり途中式を書いたほうが無難です。
ここからグラフをかくのですが、グラフをかくときはなるべく多くの情報を使って正確なものをかいたほうがいいです。 そのために次のことに気をつけましょう。
- 定義域を確認する
- 対称性・周期性を確認する
- 座標軸との交点が簡単に求められそうか確認する
これらを確認することでより丁寧なグラフをかくことができます。 さらに学習が進んで極限や微分を勉強すると他にも気をつける項目が出てくるので気になる人は「数Ⅲ微分法(準備中) 」をご覧ください。
今回の例で確認すると、まず定義域は指定されていないので実数全体と考えられます。 次に放物線なので軸に関して線対称です。周期性はグラフが繰り返し同じ形をすることをいいますが、放物線にはありません。
最後に座標軸との交点ですが、$y$軸との交点は$x=0$のときの$y$の値と考えれば、$2\cdot0^2-5\cdot0+2=2$より$(0,2)$とわかります。1次関数の切片と同じ要領です。 そして、$x$軸との交点は$y=0$のときの$x$の値と考えれば、2次方程式$2x^2-5x+2=0$を解けばいいことになります。グラフの話から方程式が登場しましたが、このことについて後半で詳しく扱います。
$2x^2-5x+2=0$の解は$x=\dfrac{1}{2},2$なので、$x$軸との交点は$\left(\dfrac{1}{2},0\right),(2,0)$となります。 以上からグラフは次のようになります。
(グラフ載せる)
また、軸は直線$x=\dfrac{5}{4}$, 頂点は点$\left(\dfrac{5}{4},-\dfrac{9}{8}\right)$です。
(1)ができれば(2)はほぼできたようなものです。$y=|f(x)|$の形になっていることに注目しましょう。
$y=|2x^2-5x+2|$のグラフは、$y=2x^2-5x+2$のグラフの$x$軸より下側の部分を$x$軸に関して対称に折り返したものなので、グラフは次のようになります。
グラフ載せる
絶対値記号が2つも出てきますが、うまく$y=|f(x)|$の知識が使えないか考えましょう。
まず、右辺全体に絶対値がついているので、$y=|x-1|-4$のグラフさえわかれば解くことができます。 $y=|x-1|-4$は右辺全体に絶対値がついているわけではないので困りますが、ここでグラフの平行移動を思い出しましょう。
すると、$y=|x-1|-4$のグラフは$y=|x-1|$のグラフを$y$軸方向に$-4$だけ平行移動したものであることがわかります。 そして、$y=|x-1|$のグラフは$y=x-1$のグラフの$x$軸より下側の部分を$x$軸に関して対称に折り返したものなので、これらを組み合わせれば$y=||x-1|-4|$のグラフをかくことができそうです。
順番に見ていくと、$y=|x-1|$のグラフは$y=x-1$のグラフを補助にして、次のようになります。
(グラフ載せる)
そして、これを$y$軸方向に$-4$だけ平行移動してから$x$軸より下側の部分を$x$軸に関して対称に折り返せば$y=||x-1|-4|$のグラフの完成です。
(グラフ載せる)
- $y=2x^2-5x+2$
- $y=|2x^2-5x+2|$
- $y=|(|x-1|-4)|$
折れ線型のグラフ
目次今回はいきなり例題を通して考えてみたいと思います。
絶対値記号がたくさん登場していて複雑そうです。困ったときは絶対値の原則的な外し方に従いましょう。
場合分けして絶対値を外していく方針で進めていきます。それぞれの絶対値の中身が$0$になる$x$の値が場合分けの境界になるので、そこに注目しましょう。
[1] $x < -1$のとき
\begin{align}&y=-(x+1)-x-(x-1)=-3x\\[0.7em]\end{align}
[2] $-1 \leqq x < 0$のとき
\begin{align}&y=(x+1)-x-(x-1)=-x+2\\[0.7em]\end{align}
[3] $0 \leqq x < 1$のとき
\begin{align}&y=(x+1)+x-(x-1)=x-2\\[0.7em]\end{align}
[4] $1 \leqq x$のとき
\begin{align}&y=(x+1)+x+(x-1)=3x\\[0.7em]\end{align}
これらをつなぐと、グラフは下のようになります。
(グラフ載せる)
このグラフを見ると、最大値は存在しませんが、最小値は$x=0$でとることがわかり、その値は$2$となります。
順番に考えていけば上のように解くことができますが、今回なぜわざわざ紹介したかと言うと、この問題には別の視点から解く方法があるからです。それが次の方法です。
折れ線関数はグラフの傾きに注目する
ここではいきなり場合分けをせずに、絶対値の中身が1次式である項の和(と定数倍)になっている今回のような関数について、グラフがどんな形になるか考えてみます。
すると、絶対値を外したとしても次数が大きくなることはないので、複数の1次(以下の)関数を繋ぎ合わせたものになっていることがわかります。 つまり、この関数のグラフは直線が繋ぎ合わさった1本の折れ線になります。
このような理由から「折れ線関数」と呼んでいました。なお、一般的な名称ではないと思うのでテストの答案などでは使わないほうがいいと思います。
このことを利用して、各直線の傾きに注目しましょう。 直線の傾きとグラフが通る一点がわかればすぐにグラフ全体がわかります。この方法を使うと以下のような別解を考えることができます。
グラフが折れまがる点の$x$座標は原則通り解いたときと同じようにそれぞれの絶対値の中身が$0$になる$x$の値です。 それぞれの場合について$x$の係数がどうなるかをまとめると次の表のようになります。
(表載せる)
あとはグラフが通る点が一点でも具体的にわかれば全体がわかります。グラフを実際にかく場合なら、折れまがる点の座標はすべて求めておくのが安心でしょう。
(グラフ載せる)
もちろん最初に紹介した方法でも解けるのですが、大事なことは「より本質に絞って手短に解いていること」と「グラフの概形をあらかじめ知っていて、それを意識しながら解いていること」です。 特にここから発展して文字定数が入ってくると解きやすさが大きく変わってくると思います。 そのような例題については「折れ線関数の最大・最小(準備中)」をご覧ください。
また、「傾きに注目する」というアイデアは微分でも登場します。こちらについて詳しく知りたい方は「微分(準備中)」をご覧ください。
4. ガウス記号を含む関数のグラフ
目次関数のグラフ3つ目はガウス記号がついた関数のグラフです。そもそもガウス記号が初登場だと思うので、今から紹介します。
記号$[\ ]$をガウス記号といいます。定義は実数$x$に対して$n \leqq x < n+1$となる整数$n$を$[x]$と表します。 何を言っているかというと、つまりこれは小数部分を切り捨てて、整数部分のみを表す「小数部分カッター」です。 こう捉えると一気にイメージしやすくなるのではないでしょうか。
ここで、整数部分と小数部分について負の数では直感と異なるので注意してください。詳しくは以下の補足で解説しています。
正の数では直感通りなのですが、負の数の整数部分・小数部分は注意が必要です。実はこの2つの定義は以下のようになっています。
実数$x$が整数$n$と$0 \leqq p < 1$の小数$p$を用いて、$x=n+p$と表されるとき、$n$を実数$x$の整数部分、$p$を実数$x$の小数部分といいます。
ポイントは小数部分が0以上1未満になっている点です。この定義より、例えば$-2.25$の整数部分は$-3$、小数部分は$0.75$です。 うっかり、整数部分が$-2$、小数部分が$0.25$(もしくは$-0.25$)などと勘違いしないように気をつけましょう。
このガウス記号を実際に使った関数のグラフがどうなるのか見ていきます。
新しい記号が出てきましたが、グラフをかくときはほぼ作業です。絶対値のときと同様に場合分けで解いていきましょう。
ガウス記号が何かを知っていれば場合分けをするだけなので、いきなり解答にいきます。
[1] $-2 \leqq x < -1$のとき
\begin{align}&y=-(-2)=2\\[0.7em]\end{align}
[2] $-1 \leqq x < 0$のとき
\begin{align}&y=-(-1)=1\\[0.7em]\end{align}
[3] $0 \leqq x < 1$のとき
\begin{align}&y=-0=0\\[0.7em]\end{align}
[4] $1 \leqq x < 2$のとき
\begin{align}&y=-1\\[0.7em]\end{align}
[5] $2 \leqq x < 3$のとき
\begin{align}&y=-2\\[0.7em]\end{align}
[6] $x=3$のとき
\begin{align}&y=-3\\[0.7em]\end{align}
よって、グラフは以下のようになります。
(グラフ載せる)
$y=|f(x)|$のグラフをかくときに$y=f(x)$のグラフを補助として考えましたが、同じようにしてガウス記号がつく前の関数のグラフを補助として考えてみます。
5. グラフと方程式のつながり
目次関数の様子を表すのに便利なグラフですが、実は方程式や不等式を解くときにも使えます。どういうことなのか解説します。
$x$についての方程式$f(x)=g(x)$を解くことを考えます。このとき、全体を$y$とおくことで別の視点が見えてきます。
\begin{align}&f(x)=g(x)=y\\[0.7em]\iff&\begin{cases}y=f(x)\\[0.5em]y=g(x)\end{cases}\end{align}
このように考えると連立方程式の形になります。連立方程式ということは方程式の実数解はグラフの交点で表されます。また、同様のことが不等式でも成り立ちます。
例えば、不等式$f(x)>g(x)$で$y_1=f(x),$ $y_2=g(x)$とおくと、
\begin{align}&\begin{cases}f(x)>g(x)\\[0.5em]y_1=f(x)\\[0.5em]y_2=g(x)\end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}y_1>y_2\\[0.5em]y_1=f(x)\\[0.5em]y_2=g(x)\end{cases}\end{align}
となります。これはつまり、$y=f(x)$と$y=g(x)$のグラフを考えて、それらの上下関係を見ればいいということです。このように、方程式や不等式はグラフと関連付けて考えることができます。
$x$についての方程式や不等式は各辺を$y$とおくことでその実数解をグラフの交点や上下関係として捉えることができる。
この方法の威力が感じられるわかりやすい例は2次不等式です。今回学んだ2次関数のグラフの知識を使ってグラフをかくことができ、それらの交点は2次方程式$f(x)=g(x)$を解けばいいので解の公式を使って求まります。 グラフに結びつけることで大小関係を視覚的に捉えることができるのでとても状況を把握しやすくなります。 実際に次回の記事で2次方程式の復習とともに2次不等式の例題を見ていきます。
また、方程式についても単純な2次方程式を解くだけなら必要ないですが、「$x^2-3x+2-k=0$が実数解をもつ$k$についての条件を求めてください。」のような問題に有効です。 こちらも不等式と同様にグラフで視覚的に捉えると非常に解きやすくなります。実際に解き方を知りたい方は「定数分離(準備中)」をご覧ください。
2次方程式・不等式に限らず使えて高校数学では頻出の発想なので、しっかり覚えておきましょう。
6. まとめ
目次今回の内容をまとめると、