連立1次方程式・不等式の解の存在条件
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この記事では1次の方程式・不等式について解が存在したり、問題で指定された状況になったりする条件を求めます。「数と式・集合と命題」分野の最後の記事として今までの知識をフル活用していきます。
目次
1. この記事を読むのに必要な前提知識
目次この記事で出てくる用語の解説とそれを詳しく扱っている記事へのリンク集です。
条件(方程式や不等式)を満たす○○が存在するための条件を「○○の存在条件」という。 注意点として、\(x\)の存在条件は\(x\)についての条件ではない。 例えば、条件\(P(x,a,b)\)(\(x,a,b\)を含む式)について\(x\)の存在条件を考えるとき、条件を満たす\(x\)が存在するかどうかは他の文字\(a,b\)次第なので\(a,b\)についての条件になる。
関数や方程式を考えるときに主役になる文字を変数、それ以外の脇役の文字を定数という。 主役とは「〇〇は××の関数である」の〇〇や××に入る文字や「△△についての方程式」の△△に入る文字を指す。 どのような状況について考えているのかを捉えるときにこの区別が重要になる。
両辺を乗除するときに注意が必要で、等式の場合と異なり、\(a >0\)のときは不等号の向きが変わらないが、 \(a > 0\)のときは不等号の向きが変わる。1次不等式の詳しい解説は以下の記事参照。
数\(a\)に対して、原点からの距離を\(a\)の絶対値といい、記号\(|a|\)で表す。 この定義より実数の範囲では、\(A \geqq 0\)のとき\(|A|=A,\) \(A < 0\)のとき\(|A|=-A\)となる。 詳しい解説は以下の記事参照。
連立方程式を解くために含まれる文字を減らすときに行う操作。 2つの方程式を①, ②と表したとき、加減法では①と②からできた式を③とすると\(\begin{cases}\text{①}\\[0.5em] \text{②}\end{cases} \iff \begin{cases}\text{①}\\[0.5em] \text{③}\end{cases} \iff \begin{cases}\text{②}\\[0.5em] \text{③}\end{cases}\)が成り立つ。 一方、代入法では②を①に代入した式を①’とすると\(\begin{cases}\text{①}\\[0.5em] \text{②}\end{cases} \iff \begin{cases}\text{①’}\\[0.5em] \text{②}\end{cases}\)が成り立つ。 特に代入法では必ず代入してできた式と代入元の式を残すことに注意。
連立方程式の不等式バージョン。解き方はそれぞれの不等式が表す範囲を求めて、その共通部分を求める。 このときに図示することが効果的で、1変数ならば数直線、2変数ならば座標平面を使って考える。
2. 存在条件の復習
目次「存在条件って何?」という人もいると思うので復習します。 「背理法の使いどきまとめと複数の文字を含む条件」の例題1で見たように「〇〇を満たす\(x\)が存在する」という形の条件を「\(x\)が存在するかどうか」を表す条件という意味で\(x\)の存在条件といいます。 そして、\(x\)が存在するかどうかは他の文字次第なので、この存在条件は\(x\)以外の文字についての条件になります。(例えば定数\(a,b\)がいたら\(a,b\)についての条件)
ここに「変数」と「定数」という視点を加えた話を前回の記事「連立方程式・不等式と「変数」・「定数」」でしました。 この記事で説明したLEVEL3の問題がまさに変数の"存在条件"を答える問題で今回解いていくものです。
小難しく書いてますが、つまり、「定数\(a,b\)を含む\(x\)についての方程式が解をもつかは\(a,b\)次第だよね、今回はそういう問題を解くよ」という話です。
さて、どのように解けばいいかというとまず素直に\(x\)などの変数について解いていきます。 答えの形が見えてきたら問題で聞かれている解の条件を確認し、その条件となることは定数がどんな状況になることと言い換えられるかを考えてそれを式で表します。 ここが難しいです。
式で表せたら、最後にその式を定数について解けばクリアです。 言葉だけだと何をやっているかイメージしにくいので具体的に問題を解いて確認していきましょう。
注:本記事では解の存在条件以外にも「解が〇〇となる条件」などが出てきますが、 煩雑になるためタイトルは「解の存在条件」で統一しています。考え方は存在条件と同じです。
3. 1次不等式の解の存在条件
目次今回はどんどん例題を解いて学んでいきます。
今までの復習が勢揃いしています。まずは\(\sqrt{A^2}\)を適切に処理しましょう。 忘れてしまった人は「循環小数・有理化・\(\sqrt{A^2}\)・二重根号 」を復習してください。 その後は前回までに解いてきた絶対値付きの1次不等式の形です。
解答の流れとしては、はじめに定数を含む不等式として\(x\)について解きましょう。 その後、解が\(-5 \leqq x \leqq 1\)になることから定数についての連立方程式が立てられます。 問題文の書き方から\(a\)と\(b\)の値はそれぞれ1つに決まりそうですが、連立方程式を扱う際は「連立方程式・不等式と「変数」・「定数」 」で学んだように同値性に気を付けましょう。
それでは解答です。\(\sqrt{A^2}=|A|\) (絶対値をつける!)より
\[\sqrt{(ax+1)^2}=|ax+1|\]
となります。次に\(|A| < B \iff -B < A < B\)より
\begin{align} &|ax+1| \leqq b\\[0.7em]\iff&-b \leqq ax+1 \leqq b\\[0.7em]\iff&-b-1 \leqq ax \leqq b-1\\[0.7em] \end{align}
と解き進めます。ここで各辺を\(a\)で割る…前に場合分けをします。\(x\)について解けたらその解が\(-5 \leqq x \leqq 1\)となる定数\(a,b\)についての条件を考えます。
[1] \(a > 0\)のとき
\begin{align} &-b-1 \leqq ax \leqq b-1\\[0.7em]\iff&\dfrac{-b-1}{a} \leqq x \leqq \dfrac{b-1}{a}\\[0.7em] \end{align}
このとき、解が\(-5 \leqq x \leqq 1\)となるような定数\(a,b\)についての条件は
\[\begin{cases}\dfrac{-b-1}{a} = -5 \cdots\cdots\text{①} \\[0.5em] \dfrac{b-1}{a} = 1 \cdots\cdots\text{②}\end{cases}\]
です。この連立方程式を解くと、まず①\({} + {} \)②から
\begin{align} \dfrac{-2}{a} &= -4\\[0.7em]a &= \dfrac{1}{2} \cdots\cdots\text{③}\\[0.7em] \end{align}
加減法なので\(\begin{cases}\text{①} \\[0.5em] \text{②}\end{cases} \iff \begin{cases}\text{①} \\[0.5em] \text{③}\end{cases} \iff \begin{cases}\text{②} \\[0.5em] \text{③}\end{cases}\)を利用して(今回は\(\begin{cases}\text{①} \\[0.5em] \text{②}\end{cases} \iff \begin{cases}\text{②} \\[0.5em] \text{③}\end{cases}\)を利用)
\begin{align} 2(b-1) &= 1\\[0.7em]b &= \dfrac{3}{2}\\[0.7em] \end{align}
よって\((a,b) = \left(\dfrac{1}{2}, \dfrac{3}{2}\right)\)ですが、ここで忘れずに場合分けの条件に合うか確認します。 \(a > 0\)よりこれは条件を満たしています。
同じことを\(a=0,\) \(a < 0\)でも行います。
[2] \(a=0\)のとき
\begin{align} &-b-1 \leqq ax \leqq b-1\\[0.7em]\iff&-b-1 \leqq 0 \cdot x \leqq b-1\\[0.7em] \end{align}
となります。\(b\)に具体的な数を代入して実験するとわかりますが、この不等式は任意の実数が解になるか、解が存在しないかの2択になるので、\(-5 \leqq x \leqq 1\)とはなりません。
[3] \(a < 0\)のとき
\begin{align} &-b-1 \leqq ax \leqq b-1\\[0.7em]\iff&\dfrac{b-1}{a} \leqq x \leqq \dfrac{-b-1}{a}\\[0.7em] \end{align}
このとき、解が\(-5 \leqq x \leqq 1\)となるような定数\(a,b\)についての条件は
\[\begin{cases}\dfrac{b-1}{a} = -5 \cdots\cdots\text{①} \\[0.5em] \dfrac{-b-1}{a} = 1 \cdots\cdots\text{②}\end{cases}\]
です。①\({} + {} \)②から
\begin{align} \dfrac{-2}{a} &= -4\\[0.7em]a &= \dfrac{1}{2} \cdots\cdots\text{③}\\[0.7em] \end{align}
\(b\)の値まで求めても良いですが、この時点で場合分けの条件\(a < 0\)を満たしていないので不適となります。
以上より答えは\(a=\dfrac{1}{2},\) \(b=\dfrac{3}{2}\)です。
- \(a=\dfrac{1}{2},\) \(b=\dfrac{3}{2}\)
4. 連立1次方程式の解の存在条件
目次続いては連立方程式の解をテーマにした問題を解いていきます。
\(x,y,a,b\)と4種類も文字が出てきたのでまずは状況を整理することから始めましょう。説明しやすいように\((3a+1)x-4(2a-b)y=4\cdots\cdots\text{①},\) \(x+(b-2)y=a\cdots\cdots\text{②}\)とします。
変数を確認すると\(x,y\)についての連立2元1次方程式であることが分かります。つまり、状況設定は中学数学でも扱った内容です。
そこに2種類の文字定数\(a,b\)が登場しています。(1),(2)ともに解(変数)の存在に関する条件を聞かれているので答えるのは定数\(a,b\)についての条件になります。
先程と同様にまずは方程式を解き進めていきましょう。連立方程式は変数の数を減らすことが原則です。2つ目の式の\(x\)の係数が1であることから代入法が使えそうです。それでは解答に入ります。
②より
\[x=-(b-2)y+a\cdots\cdots\text{③}\]
③を①に代入して
\[(3a+1)\{-(b-2)y+a\}-4(2a-b)y=4\]
式がとても長くなりましたが変数\(y\)に注目すると1次方程式です。展開して整理すると、
\[(3ab+2a-3b-2)y=3a^2+a-4\]
整理しても複雑に見えますが、係数の並びなどに注目すると因数分解できることが分かります。
\[(a-1)(3b+2)y=(a-1)(3a+4)\cdots\cdots\text{④}\]
さてこの後は両辺を\((a-1)(3b+2)\)で割る前に場合分けが必要になり処理が複雑になるので、一旦ここで解の存在がどうなるか考察してみます。
もとの連立方程式と同値なのは③かつ④です。③を見ると\(y\)が決まると\(x\)も必ずただ一つに定まります。(\(a,b\)は定数であることに注意) このことから、「連立方程式の解が存在しない・無数に存在する」という条件は「変数\(y\)についての方程式④の解が存在しない・無数に存在する」という条件と同値になります。
なのでここからは方程式④にのみ注目して、この方程式の解が存在しない・無数に存在する条件を考えます。 「1次不等式・絶対値と場合分け」の例題1の(3)に登場したように1次方程式\(Ax=B\)の解の存在状況は定数\(A,B\)の値が\(0\)になるかどうかで決まるのでした。
解が存在しないための(必要十分)条件は\(A=0\)かつ\(B \neq 0\)より
\[\begin{cases}(a-1)(3b+2)=0 \\[0.5em] (a-1)(3a+4) \neq 0 \end{cases}\]
が成り立ちます。因数分解したのが効いていて\(\text{「}AB=0 \iff A=0\text{または}B=0\text{」}\)と\(\text{「}AB \neq 0 \iff A \neq 0\text{かつ}B \neq 0\text{」}\)が使えます。したがって
\[\begin{cases}a=1\text{または}b=-\dfrac{2}{3} \\[0.5em] a \neq 1\text{かつ}a \neq -\dfrac{4}{3} \end{cases}\]
となるので「かつ」と「または」に注意すると答えは\(a \neq 1\)かつ\(a \neq -\dfrac{4}{3}\)かつ\(b=-\dfrac{2}{3}\)になります。
(1)が解ければ(2)もほぼ同じです。最後の部分だけ変えればいいだけです。
1次方程式\(Ax=B\)の解が無数に存在するための(必要十分)条件は\(A=0\)かつ\(B = 0\)より
\[\begin{cases}(a-1)(3b+2)=0 \\[0.5em] (a-1)(3a+4) = 0 \end{cases}\]
これを解くと
\[\begin{cases}a=1\text{または}b=-\dfrac{2}{3} \\[0.5em] a = 1\text{または}a = -\dfrac{4}{3} \end{cases}\]
したがって答えは\(a=1\)(\(b\)の値は何でも良い)または\((a,b)=\left(-\dfrac{4}{3}, -\dfrac{2}{3}\right)\)です。
- \(a \neq 1\)かつ\(a \neq -\dfrac{4}{3}\)かつ\(b=-\dfrac{2}{3}\)
- \(a=1\)または\((a,b)=\left(-\dfrac{4}{3}, -\dfrac{2}{3}\right)\)
以上で無事解き終わりました。ところで、この問題には別の視点がいくつかあるので紹介します。
5. 連立1次不等式の解の存在条件
目次最後は連立不等式です。連立不等式を解くときは数直線の利用がカギでした(1変数の場合)。 解の存在条件を求めるときも数直線を使って図示すると状況が把握しやすくなるので有効活用していきましょう。
第1章ラストの問題にふさわしい骨のある問題ですが、冷静に一つずつ解いていきましょう。
記号\(\begin{cases}\quad\\[0.5em] \quad \end{cases}\)が使われていませんが、文章を読むと連立不等式であることが分かります。 連立不等式はまずそれぞれの不等式を解いて、そのあと共通部分を求める流れでした。 前回「連立方程式・不等式と「変数」・「定数」」の内容を思い出しましょう。
2つの不等式を連立して解くと
\begin{align} &\begin{cases}|3x-7| \leqq k \\[0.5em] |2x-k| \leqq 2 \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}-k \leqq 3x-7 \leqq k \\[0.5em] -2 \leqq 2x-k \leqq 2 \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}-k+7 \leqq 3x \leqq k+7 \\[0.5em] -2+k \leqq 2x \leqq 2+k \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}\dfrac{-k+7}{3} \leqq x \leqq \dfrac{k+7}{3} \\[0.5em] \dfrac{-2+k}{2} \leqq x \leqq \dfrac{2+k}{2} \end{cases}\cdots\cdots\text{①}\\[0.7em] \end{align}
と解き進めることができます。ここから、①の連立不等式を満たす実数\(x\)が存在する条件を考えます。図を描いて状況を掴んでみます。
(数直線載せる)
それぞれの不等式が表す範囲が共通部分をもつ、つまり重なればいいことが分かります。これをどう数式で表すのかが考えどころです。正解は次のようになります。
\(a < x < b\)かつ\(c < x < d\)を満たす\(x\)が存在する条件は
\(a < d \text{かつ} c < b\)
ただし、\(a < b\)かつ\(c < d\)とします。(これが成り立たないとそもそも不等式を満たす解が無くなる)
補足:等号をすべてに付けた場合も成り立ちます
この内容は図を描けば導けることと、使用頻度を考えると必須暗記項目ではありませんが、頭に入れておくと素早く処理ができるようになります。 これを使えば今回の問題も解けそうです。
①の連立不等式を満たす実数\(x\)が存在するのは\(\dfrac{-k+7}{3} \leqq \dfrac{2+k}{2}\)かつ\(\dfrac{-2+k}{2} \leqq \dfrac{k+7}{3}\)のときです。 (\(\dfrac{-k+7}{3} \leqq \dfrac{k+7}{3}\)は\(k > 0\)より成立、\(\dfrac{-2+k}{2} \leqq \dfrac{2+k}{2}\)は\(k\)の値によらず常に成立。)
計算はめんどくさいですがあとは作業ですね。これを解くと、
\begin{align} &\dfrac{-k+7}{3} \leqq \dfrac{2+k}{2} \text{かつ} \dfrac{-2+k}{2} \leqq \dfrac{k+7}{3}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}\dfrac{-k+7}{3} \leqq \dfrac{2+k}{2} \\[0.5em] \dfrac{-2+k}{2} \leqq \dfrac{k+7}{3} \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}2(-k+7) \leqq 3(2+k) \\[0.5em] 3(-2+k) \leqq 2(k+7) \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}5k \geqq 8 \\[0.5em] k \leqq 20 \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}k \geqq \dfrac{8}{5} \\[0.5em] k \leqq 20 \end{cases}\\[0.7em] \end{align}
よって、\(\dfrac{-k+7}{3} \leqq \dfrac{2+k}{2}\)かつ\(\dfrac{-2+k}{2} \leqq \dfrac{k+7}{3}\)の解は\(\dfrac{8}{5} \leqq k \leqq 20\)で、これが答えになります。
またしても\(\begin{cases}\quad\\[0.5em] \quad \end{cases}\)が使われていませんが、冷静に考えると\(A < B < C \iff \begin{cases}A < B \\[0.5em] B < C \end{cases}\)です。 とりあえず(1)と同じように不等式を解いてみましょう。
\begin{align} &\begin{cases}3a(a-4) < a(x-a) \\[0.5em] a(x-a) \leqq 2(x-a) \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}ax > 4a^2-12a \\[0.5em] (a-2)x \leqq a(a-2) \end{cases}\\[0.7em] \end{align}
\(a\)や\(a-2\)で割る前に\(x\)の係数の符号で場合分けが必要でした。2つの不等式が「かつ」で結ばれているので、\(x\)の係数の符号の場合分けは「両方が正」、「一方が正で他方が\(0\)」、……という風に分けていきます。
[1] \(a > 0\)かつ\(a-2 > 0\)つまり\(a > 2\)のとき
\begin{align} &\begin{cases}ax > 4a^2-12a \\[0.5em] (a-2)x \leqq a(a-2) \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}x > 4a-12 \\[0.5em] x \leqq a \end{cases}\\[0.7em]\iff&4a-12 < x \leqq a\\[0.7em] \end{align}
より連立不等式の解は\(4a-12 < x \leqq a\)となります。数直線で表すと下の図のようになります。
(数直線載せる)
さて、ここから「この不等式を満たす整数がちょうど3個となる」定数\(a\)の条件をどう数式で表すかですが、ここで\(a\)が整数であるという条件が効いてきます。 この条件と数直線の図より、整数解がちょうど3個のときそれは\(a-2,\) \(a-1,\) \(a\)の3つであることが分かります。 候補を絞ることで「3個」という条件から「\(a-2,\) \(a-1,\) \(a\)の3つ」というより強い条件にすることができました。
そして、\(a\)が整数のとき\(4a-12\)も整数なので、この状況になるのは\(4a-12=a-3\)を満たすときになります。 これを解くと\(a=3\)であり、\(a > 2\)という条件も満たしているので答えです。 ただ、他にも答えがある可能性があるので他の場合分けについても確認しましょう。
[2] \(a > 0\)かつ\(a-2 = 0\)つまり\(a = 2\)のとき
\begin{align} &\begin{cases}ax > 4a^2-12a \\[0.5em] (a-2)x \leqq a^2-2a \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}x > 4\cdot 2-12 \\[0.5em] 0 \cdot x \leqq 0 \end{cases}\\[0.7em]\iff&x > -4\\[0.7em] \end{align}
となります。2つ目の同値が成り立つ理由は下の不等式はどんな\(x\)についても成り立つので考えなくて良いからです。 \(x > -4\)は明らかに無限個の整数解をもつので不適です。
[3] \(a > 0\)かつ\(a-2 < 0\)つまり\(0 < a < 2\)のとき
\begin{align} &\begin{cases}ax > 4a^2-12a \\[0.5em] (a-2)x \leqq a(a-2) \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}x > 4a-12 \\[0.5em] x \geqq a \end{cases}\\[0.7em] \end{align}
また、\(0 < a < 2\)の範囲では常に\(a > 4a-12\)なので連立不等式の解は\(x \geqq a\)となります。この場合も無限個の整数解をもつので不適です。
[4] \(a = 0\)かつ\(a-2 < 0\)つまり\(a = 0\)のとき
\begin{align} &\begin{cases}ax > 4a^2-12a \\[0.5em] (a-2)x \leqq a(a-2) \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}0 \cdot x > 0 \\[0.5em] x \geqq a \end{cases}\\[0.7em] \end{align}
となります。1つ目の不等式がそもそも成り立たず、解が存在しないので不適です。
[5] \(a < 0\)かつ\(a-2 < 0\)つまり\(a < 0\)のとき
\begin{align} &\begin{cases}ax > 4a^2-12a \\[0.5em] (a-2)x \leqq a(a-2) \end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}x < 4a-12 \\[0.5em] x \geqq a \end{cases}\\[0.7em] \end{align}
より連立不等式の解は\(a \leqq x < 4a-12\)となります。 [1]と同じように解くと\(4a-12=a+3\)が出てきて、これを解くと\(a=5\)が出てきますが、\(a < 0\)を満たしていないので不適です。
以上から答えは\(a=3\)と求まります。
- \(\dfrac{8}{5} \leqq k \leqq 20\)
- \(a=3\)
6. まとめと次回予告
目次まとめ
目次今回の内容をまとめると、
- 解(変数)が〇〇になる条件は定数についての条件
- 解き方は①素直に変数について解く→②問題の条件に合うには定数がどのようになればよいか考えて式で表す→③その定数について解く
- 「\(x,y\)についての連立方程式\(\begin{cases}\text{①} \\[0.5em] \text{②}\end{cases}\)の解の個数と\(x\)についての方程式①の解の個数が一致する」のように、「求めたい解の個数が別のある個数に一致する」はたまに出てくる。
- 連立不等式の解の存在条件を求めるときも数直線の利用が有効。
- \(a < x < b\)かつ\(c < x < d\)を満たす\(x\)が存在する条件は\(a < d \text{かつ} c < b\)(ただし、\(a < b\)かつ\(c < d\)で、等号がついても可)
- 「不等式を満たす整数がちょうど\(n\)個となるような条件」の問題では、どの整数が不等式を満たすのか(定数を用いて)具体的に書けることがある。(漠然と\(n\)個の整数と言われるよりこれとこれですと言われたほうが解きやすい。)
次回予告
目次次回はいよいよ高校数学で幅広く応用される2次関数に入ります。 この分野でも登場しましたが、方程式や不等式を図示して考える、特にグラフと結びつけるという考え方が本格的に登場するのでお楽しみに。