関数・グラフの基本とグラフの平行移動・対称移動

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2次関数分野初回のこの記事では関数・グラフの基本をおさらいします。途中に「最大値・最小値」や「とりうる値」の注意点も見ていきます。後半では、グラフを平行移動・対称移動させたときに式がどのように変化するのかを学びます。数式の証明だけではわかりにくい方にも、イメージを掴むための解説を紹介します。

目次

1. この記事を読むのに必要な前提知識

目次
同値・同値変形

「2の倍数である」と「偶数である」のように2つの条件が数学的に同じ意味を持つとき「2つの条件は同値である」という。 また、もとの条件と同値な条件に変形することを同値変形という。 (必要条件・十分条件についても以下のリンク参照)

2. 関数・グラフの基本

目次

まずは2次関数分野で出てくる用語を確認します。

関数の基本

目次

関数についての復習と新しい記法の紹介です。

関数の基本
  1. 2つの変数\(x,y\)の間にある関係があって、\(x\)の値を定めるとそれに対応して\(y\)の値がただ1つに定まるとき、\(y\)は\(x\)の関数であるといいます。
  2. \(x\)の関数を簡単に表すために、関数の英訳の”function”の頭文字をとって、\(f(x)\)と書きます。例えば、\(f(x)=x+1\)とおくと、以降わざわざ\(x+1\)を書く代わりに\(f(x)\)が使えて便利です。
  3. \(y=f(x)\)と書くと、式通り\(y\)が\(x\)の関数であることを表せます。省略して関数\(f(x)\)と呼ぶこともあります。 また、関数\(y=f(x)\)において、\(x\)の値を\(a\)と定めたときに対応して定まる\(y\)の値を\(f(a)\)と書き、 \(f(a)\)を関数\(f(x)\)の\(x=a\)におけるといいます。
  4. 関数\(y=f(x)\)において、変数\(x\)のとりうる値の範囲をこの関数の定義域といいます。 また、\(x\)が定義域全体を動くとき\(y\)がとる値の範囲をこの関数の値域といいます。 定義域が\(a \leqq x \leqq b\)のとき、以下のように表すことが多いです。 \[y=f(x) \quad (a \leqq x \leqq b)\]

補足①|定義域が何も書かれていないときは\(f(x)\)の値が定まるような実数\(x\)の全体とします。

補足②|\(f(x)=x+1\)のような具体的に関数を設定せずに、\(f(x)\)を使う場合は一般的な関数を表します。上の4も\(f(x)=x+1\)の場合のみを言っているわけではなく、関数について一般に言えることです。

補足③|複数の関数を同時に扱いたいときは\(f\)からアルファベット順に\(g,h,\cdots\cdots\)と割り当てることが一般的です。(例: \(f(x)=x+1, g(x)=x^2\))

言葉で見ると、「ん?」となることがあるので、噛み砕いていきましょう。

1は中学数学でも出てきた「関数とは何か」の確認です。

2は表記についての話です。例えば\(x\)の関数\(2x^2+5x+3\)について考えているとします。このとき解答で毎回「\(2x^2+5x+3\)」と書くのは面倒です。 そこで、最初に\(f(x)=2x^2+5x+3\)としておけば、以降\(f(x)\)と簡潔に表せます

3番について、補足②で書いたように具体的な関数を設定しなければ単に「\(y\)は\(x\)の関数である」ということを表せます。(関数の具体的な形がわからなくても式で表せるので便利) そして、\(f(a)\)という表記が非常に便利で、例えば、関数\(y=2x^2+5x+3\)を考えるときに\(f(x)=2x^2+5x+3\)としておくと、 「\(x=1\)における\(y\)の値は\(10\)」という内容を「\(f(1)=10\)」というシンプルな記述で表せます

4は中学数学の復習なので大丈夫だと思います。補足①について「\(f(x)\)の値が定まるような実数\(x\)の全体」とは、 例えば\(f(x)=\dfrac{1}{x}\)(反比例)の場合\(x=0\)を除いた実数全体で考えるという意味です。

以上で基本は終了です。ところで、関数が出てくると「最大値・最小値」や「とりうる値」という言葉が出てきますが、これらが意外と厄介です。 以下の補足に詳しく書いたので、時間があれば読んでみてください。

補足|関数の最大値・最小値ととりうる値

感覚的には明らかですが定義を確認します。 関数\(f(x)\)の最大値が\(M\)(”MAX”M)であるとは次の2つが成り立つことです。

  1. 定義域に含まれるすべての\(x\)について\(f(x) \leqq M\)
  2. \(f(x)=M\)を満たす\(x\)が存在する

1は\(M\)より大きいものが無いことを言っています。もし、最大値が\(M\)と言っているのにそれより大きいものが有ったら詐欺ですからね。 2は実際に\(f(x)\)が\(M\)になるときがあることを確認しています。これももし、最大値が\(M\)と言っているのに実際にはその値まで届いていなかったら詐欺ですよね。

最小値についても同様に定義されます。

さて、ここで問題になるのが「とりうる値(=値域)」と「最大値・最小値」と「不等式」の関係です。 「1次不等式・絶対値と場合分け」の「参考|等号成立に注意しなければならない例」でも軽く出てきた内容です。 この3つをそれぞれ式を使って表現すると、以下のようになります。

  1. \(f(x)\)の値域は\(m \leqq f(x) \leqq M\)である。
  2. \(f(x)\)の最大値は\(M\)、最小値は\(m\)である。(”min”m、最大値とは大文字小文字で区別)
  3. 定義域に含まれるすべての\(x\)について\(m \leqq f(x) \leqq M\)

注意すべきはこれらはすべて異なる主張で、上にある条件ほど強いです。 「とりうる値(=値域)」がわかれば「最大値・最小値」も「不等式」もわかりますが、「不等式」がわかっても「最大値・最小値」や「とりうる値(=値域)」はわかりません。

反例を確認するとまず、\(f(x)=0\)(ずっと\(0\))を考えたときに\(-1 \leqq f(x) \leqq 1\)ですが、 最大値は\(1\)ではなく、最小値も\(-1\)ではありません。

「最大値・最小値」から「とりうる値(=値域)」の方は導けそうですが、それは今まで連続な関数を考えていたからです。 例えば、\(f(x)=\begin{cases}0 & (0 \leqq x < 1) \\[0.5em] 1 & (x=1)\end{cases}\)の最大値は1、最小値は0ですが、 \(f(x)\)の値域は\(0 \leqq f(x) \leqq 1\)ではありません。

このように実は使い分けがめんどくさいので注意しましょう。特に値域をいうときは単に\(m \leqq f(x) \leqq M\)と書くと3番のただの不等式の意味になってしまうので、 しっかり「\(f(x)\)の値域は」などの言葉を補いましょう。

グラフの基本

目次

グラフについても中学数学で学んだ通りですが、新出の用語もあるので確認していきます。

グラフの基本
  1. 平面上に座標軸を定めると、平面上の点\(P\)の位置は2つの実数の組\((a,b)\)で表されます。 この組\((a,b)\)を点\(P\)の座標といい、\(P(a,b)\)と書きます。 座標軸の定められた平面を座標平面といいます。
  2. 座標平面には場所によって名前がついています。 下の図のように座標軸で4つに分けて、\(x,y\)座標がともに正となる部分から反時計回りに第1象限, 第2象限, 第3象限, 第4象限といいます。 ただし、座標軸上の点はどの象限にも属しません。

    (図を載せる)

    補足:数学では反時計回りを正とする場面が多いです。三角関数などもこの慣例に従います。

  3. 関数\(y=f(x)\)に対し、座標平面上で等式\(y=f(x)\)を満たすような点\((x,f(x))\)を集めてできる図形を、この関数のグラフといいます。 逆にグラフに対して\(y=f(x)\)をグラフの方程式といいます。
  4. 座標平面上の点\((a,b)\)が関数\(y=f(x)\)のグラフ上にあるかどうかは関数\(y=f(x)\)を満たすか調べれば分かるので、以下の関係が成り立ちます。

    点\((a,b)\)が関数\(y=f(x)\)のグラフ上にある\({} \iff b=f(a)\)

先程と同様に噛み砕いていきます。

1は今までにも使ってきた座標の表記の確認です。新出用語の「座標平面」は第1章でもフライングして登場していましたが、グラフが書かれる平面のことを指しています。 いわば数直線の2次元ver.です。

2は名前の紹介です。そこまで登場しませんが、全く知らずに名前を言われてもわからないと困るので覚えておきましょう。

3は算数や中学数学でも出てきた「グラフ」を高校数学風に言っただけで意味は変わりません。「グラフの方程式」の方は新出ですが、グラフから見た\(y=f(x)\)を表す言葉です。

4はよく読むと当たり前のことを言っています。グラフの方程式を満たせばグラフ上にある、満たさなければグラフ上にはないということです。 ただ、意外と重要な考え方で、早速、次の「グラフの平行移動」での証明でも使います。

補足|2変数関数のグラフ

この分野では基本的に1変数関数を考えますが、高校数学では2変数関数を考える機会もあります。 このときグラフは3次元になり、「グラフの基本」の内容は適宜、3次元に読み替えて成り立ちます。

座標平面に対しては「座標空間」という言葉が登場します。 また、座標空間の象限に関しては筆者が高校生の間に一度も聞いたことがないレベルなので登場しないと考えてもらって大丈夫です。(定義することはできる)

例として\(z\)を2変数\(x,y\)の関数として\(z=x^2+y^2\)のグラフを載せておきます。

(グラフ載せる)

3. グラフの平行移動

目次

座標平面上でグラフを平行移動させたとき、グラフの方程式はどのように変化するでしょうか。この問題、筆者が高校生のときはなかなか腑に落ちませんでした。答えは次のようになります。

グラフの平行移動

グラフを\(x\)軸方向に\(p\)、\(y\)軸方向に\(q\)だけ平行移動したグラフの方程式は、もとのグラフの方程式の\(x\)を\(x-p\)に、\(y\)を\(y-q\)に置き換えたものになる。

直感と一致したでしょうか。教科書や参考書には正確な証明が載っていますが、いきなり証明を読んでも「ナニイッテルカワカラナイ…」という人もいると思うので、いくつか説明パターンを用意しました。 とりあえずイメージを掴みたい人は1つ目を、\(x-p\)ではなく、\(x+p\)で置き換えるような気がする人は2つ目を、数式で正確に理解したい人は3つ目をご覧ください。もちろん全部見てもらえると嬉しいです。

説明1|イメージで攻略する

例えば、\(y=x^2\)のグラフを\(x\)軸方向に\(1\)だけ平行移動したとします。このときグラフは下の図のように移動します。

(グラフ載せる)

ここで頂点に注目すると、点\((0,0)\)から点\((1,0)\)に移動しています。もとは\(x=0\)で頂点だったのに、平行移動によって\(x=1\)まで進まないと頂点を迎えることができなくなっています。

これは\(x\)が「\(1\)だけ足かせを付けられる」とイメージすることができます。これを式で表すと、\(x\)を\(x-1\)に置き換えることになります。よって、グラフの方程式は\(y=(x-1)^2\)になります。

反対に\(x\)軸方向に\(-1\)だけ平行移動したときは、グラフは下の図のように移動します。

(グラフ載せる)

今度は\(x=-1\)の時点で既に頂点を迎えています。つまり先程とは逆で、\(x\)が「\(1\)だけ下駄を履かせられる」イメージです。式で表すと、\(x\)を\(x+1\)に置き換えることになります。よって、グラフの方程式は\(y=(x+1)^2\)になります。

このように、グラフが右に移動すると\(x\)が足かせを付けられるイメージで、左に移動すると\(x\)が下駄を履かせられるイメージになります。これを数式で表した結果が「\(x\)を\(x-p\)に置き換える」です。

この捉え方は\(y\)軸方向に応用しにくいのがデメリットですが、「三角関数(準備中)」で出てくる「位相が進む・遅れる」という考え方と非常によく合うので、1つ目の説明として紹介しました。

説明2|\(x+p\)で置き換えるべきなような気がする理由

置き換えるのはなんとなくわかるが、\(x-p\)ではなく、\(x+p\)な気がするという人もいると思います。この疑問を深掘りしていきます。

\(x+p\)に置き換えるべきなように感じる人は、平行移動と聞いて「点の平行移動」の例を思い浮かべている可能性があります。

例えば、原点\((0,0)\)を\(x\)軸方向に\(1\)だけ平行移動した点の座標は\((0+1,0)\)です。これはもちろん合っています。 この例から点の集合であるグラフも同じように考えていくと、\(x+p\)で置き換えるような気がしてきます。

しかし、よく考えてみるとこれは\(x\)を\(x+1\)に置き換えているわけではなく、\(x\)の値に\(1\)を足しているのです。 「え?同じことじゃない?」と思うかもしれませんが、実は違います。点の平行移動の例だと2つがゴチャゴチャになってわかりにくいです。 そこで、グラフの平行移動に話を戻すと、誤解を解くことができます。

\(y=x^2\)のグラフを\(y\)軸方向に1だけ平行移動したとします。このとき、\(y\)を\(y+1\)に置き換えた式は\(y+1=x^2\)です。 一方、\(y\)の値に\(1\)を足した式は\(y=x^2+1\)です。このように、2つは別の式になります。 そして、2つのうち正しいものは\(y\)の値に\(1\)を足した\(y=x^2+1\)です。この式はまさに「\(y\)軸方向に1だけ平行移動する」感覚通りではないでしょうか?

「じゃあ置き換えなんてめんどくさい考え方は要らないじゃん」となりますが、問題なのは\(x\)軸方向の平行移動です。 先程の「値に1を足す」という考え方は\(y=\text{〇〇}\)という形だから使えたので、\(x\)軸方向には使えないのです。 また、\(y\)軸方向についても常に\(y=\text{〇〇}\)という形に直さないと使えないのは不便です。

では実際にどうすれば平行移動したグラフの方程式が導けるのか説明3で数式を使って解説していきます。

説明3|数式を使った証明

説明1ではイメージを解説、説明2では誤解を解いていきましたが、では実際にどうすれば平行移動したグラフの方程式を求めることができるのか数式を使って証明していこうと思います。

ポイントは「新しいグラフ上の点を\(x\)軸方向に\(-p\), \(y\)軸方向に\(-q\)だけ平行移動して戻した点はもとのグラフ上にある」という逆転の発想です。 まず、新しいグラフ上の点が1つ与えられたとして(どの点でもいい)、その点を\(P(X, Y)\)とおきます。このとき、上の逆転の発想から「点\(P\)を\(x\)軸方向に\(-p\), \(y\)軸方向に\(-q\)だけ平行移動して戻した点はもとのグラフ上にある」といえます。

点の平行移動は説明2でも出てきたように、値に平行移動した分を足せばいいだけなので、戻した点の座標は\((X-p, Y-q)\)になります。 そして、「もとのグラフ上にある」についてですが、ここでグラフの基本の4番の内容を使います。 つまり、点\(P\)を平行移動して戻した点がもとのグラフの方程式を満たすのです。

このことから、もとのグラフの方程式を\(y=f(x)\)とすると、\(Y-q=f(X-p)\)が成り立ちます。関係式が出てきましたね。 始めに「どの点でもいい」とあるようにこの関係式は新しいグラフ上のすべての点について成り立ちます

したがって、「新しいグラフ上のすべての点\((X, Y)\)が関係式\(y-q=f(x-p)\)を満たすこと……①」がわかりました。ということは、この点は\(y-q=f(x-p)\)のグラフ上にあるので証明が完了……と思いきや、 実はこれだけだと不十分なのです。

その理由は「曲線\(y-q=f(x-p)\)上のすべての点が、平行移動した先の点になっている……②」かどうかを確かめていないからです。(曲線\(y-q=f(x-p)\)とは\(y-q=f(x-p)\)のグラフのことです。具体的にどんな形かわからないので曲線と呼んでいます。)

「ん??」となった方、安心してください。ここは少し難しいです。つまり何が言いたいかというと、「曲線\(y-q=f(x-p)\)上の点なのに、新しいグラフ上の点ではないような例外が存在しないことをきちんと確かめてください」という意味です。 (この例では例外が存在しないことはグラフの平行移動を考えれば当たり前みたいなものですが……)

点\(P\)を平行移動して戻した点を\(Q\)とします。(つまり、点\((X-p, Y-q)\)のこと。)点\(Q\)がもとのグラフ全体を動くとき、点\(P\)もそれに対応して、曲線\(y-q=f(x-p)\)全体を動きます。 これで②を示すことができました。

以上から①, ②の両方が示せたので、正真正銘、新しいグラフの方程式が\(y-q=f(x-p)\)であると証明できました。結果的に、もとのグラフの方程式の\(x\)を\(x-p\)に、\(y\)を\(y-q\)に置き換えたものになっています。 また、もとのグラフの方程式が\(y=f(x)\)という形でなくても同様に示せるのでいつでもこの置き換えが使えます。

何を言ってるかよく分からなかった人も安心してください。この内容は数Ⅱで登場する軌跡・領域の考え方なので、数Ⅰを学習している人にはハードルが高めです。 軌跡・領域分野を学習した後に復習すると、理解しやすいと思います。

4. グラフの対称移動

目次

平行移動を考えた後だと対称移動もだいぶ飲み込みやすいと思います。平行移動のときと同様に\(x\)や\(y\)を置き換えます。

グラフの対称移動

関数\(y=f(x)\)のグラフを\(x\)軸・\(y\)軸・原点に関して対称移動したグラフの方程式は、

  • \(x\)軸|\(-y=f(x)\) (\(y\)を\(-y\)に置き換え)
  • \(y\)軸|\(y=f(-x)\) (\(x\)を\(-x\)に置き換え)
  • 原点|\(-y=f(-x)\) (\(x,y\)をそれぞれ\(-x,-y\)に置き換え)

(注|平行移動のときと同様に、\(y=f(x)\)の形でなくてもこの置き換えは使えます。)

"\(x\)"軸に関して対称移動するときに符号が変わるのは\(x\)ではなく\(y\)であることに気をつけましょう。\(x\)軸に対する対称移動で変化するのは\(y\)座標です。

証明は平行移動のときと同じ考え方でできます。代表例として原点対称移動の例を載せておきます。

参考|原点対称移動の証明

状況設定としてもとのグラフの方程式を\(y=f(x)\)とします。平行移動のときと同様に「新しいグラフ上の点を原点対称移動して戻した点はもとのグラフ上にある」と捉えます。

さて、先程の説明3では思いの外、長い解答になってしまいましたがそれは必要条件と十分条件を別々に示していたからです。 どういうことかと言うと、実は①で、「\(y-q=f(x-p)\)」は「点\((x,y)\)が新しいグラフ上にあること」の必要条件であることを、②で十分条件であることを示しています。 つまり、必要十分であることを確かめていたわけです。

なので、始めから必要十分な変形、つまり、同値変形をしていけばもっと簡潔に記述することができます。今回の例で試してみましょう。

座標平面上の点\(P(x,y)\)について

\begin{align}&\text{点\(P\)は関数\(y=f(x)\)のグラフを原点に関して対称移動したグラフ上の点である}\\[0.7em]\iff&\text{点\(P\)を原点に関して対称移動した点は関数\(y=f(x)\)のグラフ上にある}\\[0.7em]\iff&\text{点\((-x, -y)\)は曲線\(y=f(x)\)上にある}\\[0.7em]\iff&-y=f(-x)\end{align}

が成り立ちます。したがって、関数\(y=f(x)\)のグラフを原点に関して対称移動したグラフの方程式は\(-y=f(-x)\)となります。

この対称移動ですが、実は対称移動自体で使うほかに「グラフが対称かどうか」を判断するために使うことが多いです。 例えば「グラフが\(y\)軸に関して対称」は「もとのグラフと\(y\)軸に関して対称移動したグラフが一致する」と考えることができます。この考え方を使うと「グラフが対称かどうか」を以下のように表すことができます。

(\(x\)軸に関して対称は、1つの\(x\)の値に対して2種類の\(y\)の値が考えられることになり、今回の関数の定義に合わなくなってしまうので除外します。)

グラフの対称性を調べる方法

関数\(y=f(x)\)のグラフが\(y\)軸・原点に関して対称であるとき、それぞれ次のことが成り立ちます。

  • \(y\)軸に関して対称\(\iff f(x)=f(-x)\) (関数\(f(x)\)は偶関数であるという。)
  • 原点に関して対称\(\iff f(x)=-f(-x)\) (関数\(f(x)\)は奇関数であるという。)

(補足|\(f(x)=f(-x)\)が成り立つとは、\(x\)にどんな値を入れても等号が成り立つという意味です。詳しくは「恒等式(準備中)」をご覧ください。)

実際に調べるときは\(f(-x)\)が\(f(x)\)に等しくなるか、\(-f(x)\)に等しくなるかで判別することが多いです。 グラフの形が全くわからないときに、もしこれらが成り立てば\(y\)軸対称or原点対称だとわかるので重要なヒントになります。

ところで、これらを満たすとき関数に「偶関数・奇関数」という名前が付きますが、これは\(x\)の\(n\)乗に由来します。 \(y=x^n\)のグラフは\(n\)が偶数のとき\(y\)軸に関して対称であり、奇数のとき原点に関して対称です。

例えば見慣れた\(y=x^2\)のグラフは\(y\)軸に関して対称ですが、確かに\(f(-x)=(-x)^2=x^2=f(x)\)が成り立っています。 また、関数\(f(x)=x^3\)を考えると、\(f(-x)=(-x)^3=-x^3=-f(x)\)となり、実際に\(y=f(x)\)のグラフは下のように原点に関して対称になります。

(グラフ載せる)

今回の内容は以上です。細かな点が気になる人に向けていくつか補足を書いたので興味があればご覧ください。

補足|\(x\)軸・\(y\)軸・原点以外の対称移動

新しいことを学んだらすぐ一般化したくなってしまう人のために対称移動を一般化してみましょう。このグラフの対称移動の問題は点の対称移動に帰着されるので、それがわかれば解けます。数学Ⅱの図形と方程式分野の知識があると理解しやすいです。

[1] まずは、まだギリギリ出題されそうな原点対称移動の一般化、「点\((p,q)\)に関して対称移動」を考えてみます。

点\((x,y)\)を点\((p,q)\)に関して対称移動した点の座標を考えます。ポイントは発想を転換して「点\((x,y)\)と対称移動した後の点との中点が点\((p,q)\)」と捉えることです。 このことから、求める点の座標を\((x^{\prime},y^{\prime})\)とすると、

\begin{align}&\begin{cases}\dfrac{x+x^{\prime}}{2}=p\\[0.5em] \dfrac{y+y^{\prime}}{2}=q\end{cases}\\[0.7em]\iff&\begin{cases}x^{\prime}=2p-x\\[0.5em] y^{\prime}=2q-y\end{cases}\end{align}

が成り立ちます。これを使えばグラフの対称移動も求めることができます。

座標平面上の点\(P(x,y)\)について

\begin{align}&\text{点\(P\)は関数\(y=f(x)\)のグラフを点\((p,q)\)に関して対称移動したグラフ上の点である}\\[0.7em]\iff&\text{点\(P\)を点\((p,q)\)に関して対称移動した点は関数\(y=f(x)\)のグラフ上にある}\\[0.7em]\iff&\text{点\((2p-x, 2q-y)\)は曲線\(y=f(x)\)上にある}\\[0.7em]\iff&2q-y=f(2q-x)\end{align}

したがって、関数\(y=f(x)\)のグラフを点\((p,q)\)に関して対称移動したグラフの方程式は\(2q-y=f(2q-x)\)となります。

[2] 次に、\(x\)軸・\(y\)軸対称も一般化してみます。それぞれ「直線\(y=q\)・直線\(x=p\)に関して対称移動」として考えます。

実は[1]で考えたことがそのまま使えて、点\((x,y)\)を直線\(y=q\)に関して対称移動した点の座標は\((x, 2q-y)\)です。(直線\(x=p\)も同様) したがって、関数\(y=f(x)\)のグラフを直線\(y=q\)に関して対称移動したグラフの方程式は\(2q-y=f(x)\)となり、関数\(y=f(x)\)のグラフを直線\(x=p\)に関して対称移動したグラフの方程式は\(y=f(2p-x)\)となります。

[3] 最後に、もはや趣味の領域の「直線\(y=ax\)に関して対称移動」を紹介します。

この記事では証明を省略しますが、点\((x,y)\)を直線\(y=ax\)に関して対称移動した点の座標は

\[\left(\dfrac{1-a^2}{1+a^2}x+\dfrac{2a}{1+a^2}y,\quad \dfrac{2a}{1+a^2}x-\dfrac{1-a^2}{1+a^2}y\right)\]

となります。これを使うと、座標平面上の点\(P(x,y)\)について

\begin{align}&\text{点\(P\)は関数\(y=f(x)\)のグラフを直線\(y=ax\)に関して対称移動したグラフ上の点である}\\[0.7em]\iff&\text{点\(P\)を直線\(y=ax\)に関して対称移動した点は関数\(y=f(x)\)のグラフ上にある}\\[0.7em]\iff&\text{点\(\left(\dfrac{1-a^2}{1+a^2}x+\dfrac{2a}{1+a^2}y,\quad \dfrac{2a}{1+a^2}x-\dfrac{1-a^2}{1+a^2}y\right)\)は曲線\(y=f(x)\)上にある}\\[0.7em]\iff&\dfrac{2a}{1+a^2}x-\dfrac{1-a^2}{1+a^2}y=f\left(\dfrac{1-a^2}{1+a^2}x+\dfrac{2a}{1+a^2}y\right)\end{align}

したがって、関数\(y=f(x)\)のグラフを直線\(y=ax\)に関して対称移動したグラフの方程式は

\[\dfrac{2a}{1+a^2}x-\dfrac{1-a^2}{1+a^2}y=f\left(\dfrac{1-a^2}{1+a^2}x+\dfrac{2a}{1+a^2}y\right)\]

となります。

もしくは、直線\(y=ax\)と\(x\)軸とのなす角を\(\theta\)とすると、

\[(\sin 2\theta)x-(\cos 2\theta)y=f((\cos 2\theta)x+(\sin 2\theta)y)\]

と表すこともできます。

一般の直線に対しては複雑すぎるのでさすがに省略します。興味のある人は求めてみてください。

補足|\(f(-x)\)という書き方に違和感がある人へ

先程出てきた\(f(-x)\)、別に気にならなかった人はいいのですが、 「\(f(-x)\)ってことは\(f(x)\)の\(x\)に\(-x\)を代入だよな……『\(x\)に\(-x\)を代入』って何??」のように気になってしまった人へ補足を加えます。

まず、\(f(x)=x^3\)に出てくる\(x\)は「\(y\)は"\(x\)"の関数である」の\(x\)に由来します。

一方、計算式に出てきた\(f(-x)\)は「マイナス〇〇を表したい」という気持ちで使われています。要は「\(f(\text{マイナス〇〇})=-f(\text{〇〇})\)」さえ示せれば何でも良いわけです。

なので、別に\(x\)でなくても大丈夫です。\(f(-x)\)という書き方に違和感がある人はおそらく\(f(-a)=-f(a)\)などと書かれているとわかりやすいと思います。

気になる人にとっては紛らわしい同じ\(x\)をなぜ使うかというと、理由は特になくただの慣例だと思われます。高校数学の他の場面(積分変数など)でもたまに同じような現象に遭遇するので頭の片隅に置いておくと沼らずに済むかもしれません。

5. まとめ

目次

今回の内容をまとめると、

  1. 関数の簡単な表記法として\(f(x)\)が登場、\(x=a\)のときの値を\(f(a)\)と書ける。
  2. グラフに対して\(y=f(x)\)をグラフの方程式という。
  3. 点\((a,b)\)が関数\(y=f(x)\)のグラフ上にある\(\iff b=f(a)\)
  4. グラフを\(x\)軸方向に\(p\)、\(y\)軸方向に\(q\)だけ平行移動したグラフの方程式は、もとのグラフの方程式の\(x\)を\(x-p\)に、\(y\)を\(y-q\)に置き換えたものになる。
  5. 関数\(y=f(x)\)のグラフを\(x\)軸・\(y\)軸・原点に関して対称移動したグラフの方程式はそれぞれ、 \(x\)軸|\(-y=f(x),\) \(y\)軸|\(y=f(-x),\) 原点|\(-y=f(-x)\)

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