循環小数・有理化・\(\sqrt{A^2}\)・二重根号

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今回は数や式の変形に関する事項をまとめて4つ扱います。単独で問題になることは少ないですが、特に式の変形に関するものは計算途中によく出てくるので、正確に対処できるようにしましょう。

目次

  1. 循環小数
  2. 有理化
  3. \(\sqrt{A^2}\)の扱い方
  4. 二重根号
  5. まとめ
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1. 循環小数

目次

分数の形で表される数を有理数といい、有理数のうち小数で表したときにいくつかの数字の配列が繰り返されるものを循環小数といいます。

ここでは循環小数と分数の変換を学びます。

補足|循環小数の表し方

循環小数は循環する最初と最後の数字の上に点を付けて表します。

(例)\(1.3178178⋯⋯=1.3\dot{1}7\dot{8}\)

循環する数字が一つの場合はその数字の上にのみ点を付けます。

(例)\(0.666⋯⋯=0.\dot{6}\)

例題1 循環小数と分数の変換
目次

循環小数は分数に、分数は循環小数に直して表してください。

  1. \(\dfrac{8}{33}\)
  2. \(5.\dot{1}0\dot{3}\)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題1の(1)の解説
例題1

分数から循環小数への変換は割り算をするだけです。筆算をすると同じ形が繰り返される様子がよくわかります。

\(\dfrac{8}{33}=0.\dot{2}\dot{4}\)

例題1の(2)の解説
例題1

循環小数から分数への変換は×10(繰り返しの桁数)から元の数を引くことで繰り返し部分を消去します。実際に問題を解いて確認してみましょう。

考えやすくするために\(x=5.\dot{1}0\dot{3}\)とおき、繰り返しは”\(103\)”なので\(\times10^3\)を考えます。

\begin{align} 1000x=&5103.\dot{1}0\dot{3}\\[0.7em] x=&5.\dot{1}0\dot{3} \end{align}

2式の辺々を引き算すると、

\begin{align} 999x=5098 \end{align}

よって\(x=\dfrac{5098}{999}\)です。最後に約分ができる場合はお忘れなく。

循環小数を分数に直すときは無限等比級数を利用する方法もあります。実際に使うことは少ないですが、興味のある人は「無限等比級数(準備中)」をご覧ください。

例題1の解答
例題1
  1. \(0.\dot{2}\dot{4}\)
  2. \(\dfrac{5098}{999}\)

2. 有理化

目次

中学校でも有理化が出てきたと思いますが、分母と分子に同じものをかけて有理化します。和と差の積の公式を使ってルートを消すことがポイントです。

例題2 分母の有理化
目次

次の式の分母を有理化して簡単にしてください。

  1. \(\dfrac{3}{2+\sqrt{5}}\)
  2. \(\dfrac{\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{5}}{\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}}\)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題2の(1)の解説
例題2

「分母に\(\sqrt{5}\)があるから\(\sqrt{5}\)をかける」と考えると、\(2\sqrt{5}+5\)となってしまい、上手くいきません。

そこで、\(2\)と\(\sqrt{5}\)の和と考えて和と差の積を使うと上手くいきます。

\begin{align} &\dfrac{3}{2+\sqrt{5}}\\[0.7em] =&\dfrac{3}{\sqrt{5}+2}⋯⋯(*)\\[0.7em] =&\dfrac{3(\sqrt{5}-2)}{(\sqrt{5}+2)(\sqrt{5}-2)}\\[0.7em] =&3\sqrt{5}-6 \end{align}

(*)展開後に分母が\(1\)になるように\(\sqrt{5}+2\)と書き換えました。

例題2の(2)の解説
例題2

分母に根号が3つあります。3つになっても和と差の積を使うごとに根号が1つずつ減っていくので、順番に計算していけば答えにたどり着きます。

しかし今回は数字同士の関係に注目することで、その後の計算が楽になるパターンがあります。何と何の和と見ればよいか考えてみてください。

\begin{align} &\dfrac{\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{5}}{\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{5}}{(\sqrt{2}+\sqrt{3})+\sqrt{5}}\\[0.7em] =&\dfrac{(\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{5})\{(\sqrt{2}+\sqrt{3})-\sqrt{5}\}}{\{(\sqrt{2}+\sqrt{3})+\sqrt{5}\}\{(\sqrt{2}+\sqrt{3})-\sqrt{5}\}}\\[0.7em] =&\dfrac{\{(\sqrt{2}-\sqrt{5})-\sqrt{3}\}\{(\sqrt{2}-\sqrt{5})+\sqrt{3}\}}{(\sqrt{2}+\sqrt{3})^2-(\sqrt{5})^2}\\[0.7em] =&\dfrac{(\sqrt{2}-\sqrt{5})^2-(\sqrt{3})^2}{5+2\sqrt{6}-5}\\[0.7em] =&\dfrac{4-2\sqrt{10}}{2\sqrt{6}}\\[0.7em] =&\dfrac{2-\sqrt{10}}{\sqrt{6}}\\[0.7em] =&\dfrac{(2-\sqrt{10})・\sqrt{6}}{\sqrt{6}・\sqrt{6}}\\[0.7em] =&\dfrac{2\sqrt{6}-2\sqrt{15}}{6}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{15}}{3} \end{align}

2+3=5に注目して、分母を\((\sqrt{2}+\sqrt{3})+\sqrt{5}\)と捉えると\(5+2\sqrt{6}-5\)となり\(5\)が打ち消されました。 これによりその後の計算量が少し減っています。

参考として以下に\(\sqrt{2}+(\sqrt{3}+\sqrt{5})\)と捉えた場合を載せておきます。計算量を比べてみてください。

参考|分母を\(\sqrt{2}+(\sqrt{3}+\sqrt{5})\)と捉えた場合

\begin{align} &\dfrac{\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{5}}{\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{5}}{(\sqrt{5}+\sqrt{3})+\sqrt{2}}\\[0.7em] =&-\dfrac{\{(\sqrt{5}+\sqrt{3})-\sqrt{2}\}^2}{\{(\sqrt{5}+\sqrt{3})+\sqrt{2}\}\{(\sqrt{5}+\sqrt{3})-\sqrt{2}\}}\\[0.7em] =&-\dfrac{10+2\sqrt{15}-2\sqrt{6}-2\sqrt{10}}{6+2\sqrt{15}}\\[0.7em] =&-\dfrac{5+\sqrt{15}-\sqrt{6}-\sqrt{10}}{3+\sqrt{15}}\\[0.7em] =&-\dfrac{(5+\sqrt{15}-\sqrt{6}-\sqrt{10})(\sqrt{15}-3)}{(\sqrt{15}+3)(\sqrt{15}-3)}\\[0.7em] =&-\dfrac{5\sqrt{15}-15+15-3\sqrt{15}-3\sqrt{10}+3\sqrt{6}-5\sqrt{6}+3\sqrt{10}}{6}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{15}}{3} \end{align}

分子の計算が\((a+b+c)^2\)の形になってしまったことも重なって、計算量が大幅に増えています。

例題2の解答
例題2
  1. \(3\sqrt{5}-6\)
  2. \(\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{15}}{3}\)

3. \(\sqrt{A^2}\)の扱い方

目次

この形は計算問題に限らずよく登場するので処理の仕方を忘れないようにしましょう。

\(\sqrt{A^2}\)のルートの外し方

\(\sqrt{A^2}=|A|\)  (絶対値をつける!)

絶対値を付ける理由は\(A\)が負の時を考えるとわかります。 この形は本当に各所で出現して、絶対値を付けるのを意外と忘れやすいので注意しましょう。 一問だけ例題を解いて確認しましょう。

例題3 \(\sqrt{A^2}\)の処理
目次
  1. \(x=\dfrac{2a}{1+a^2}\) \((a>0)\)のとき \(\dfrac{\sqrt{1+x}-\sqrt{1-x}}{\sqrt{1+x}+\sqrt{1-x}}\)を\(a\)で表してください。

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題3の(1)の解説
例題3

式がとても複雑そうですが代入して計算を進めていくと\(\sqrt{A^2}\)の形が出現するので、今回の方法で処理しましょう。 絶対値についての詳しい解説は「1次方程式・不等式(準備中)」をご覧ください。

\begin{align} &\sqrt{1+x}\\[0.7em] =&\sqrt{\dfrac{1+a^2+2a}{1+a^2}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{(a+1)^2}}{\sqrt{1+a^2}}\\[0.7em] =&\dfrac{|a+1|}{\sqrt{1+a^2}}\\[0.7em] =&\dfrac{a+1}{\sqrt{1+a^2}}(a>0より、a+1>0)\\[0.7em] \end{align}

\begin{align} &\sqrt{1-x}\\[0.7em] =&\sqrt{\dfrac{1+a^2-2a}{1+a^2}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{(a-1)^2}}{\sqrt{1+a^2}}\\[0.7em] =&\dfrac{|a-1|}{\sqrt{1+a^2}}\\[0.7em] \end{align}

今回の内容はここまで到達できれば大丈夫です。 以降は「1次方程式・不等式(準備中)」で解説しますが、 絶対値の中身の正負で場合分けします。

\[\dfrac{\sqrt{1+x}-\sqrt{1-x}}{\sqrt{1+x}+\sqrt{1-x}}=\dfrac{(a+1)-|a-1|}{(a+1)+|a-1|}\]

\[[1]\ 0 < a < 1 のとき|a-1|=1-aより、\] \begin{align} &\dfrac{\sqrt{1+x}-\sqrt{1-x}}{\sqrt{1+x}+\sqrt{1-x}}\\[0.7em] =&\dfrac{(a+1)-(1-a)}{(a+1)+(1-a)}\\[0.7em] =&a\\[0.7em] \end{align}

\[[2]\ 1\leqq a のとき|a-1|=a-1より、\] \begin{align} &\dfrac{\sqrt{1+x}-\sqrt{1-x}}{\sqrt{1+x}+\sqrt{1-x}}\\[0.7em] =&\dfrac{(a+1)-(a-1)}{(a+1)+(a-1)}\\[0.7em] =&\dfrac{1}{a}\\[0.7em] \end{align}

したがって、\(0< a< 1\)のとき\(a,\) \(1\leqq a\)のとき\(\dfrac{1}{a}\)が答えになります。

例題3の解答
例題3

\(0< a< 1\)のとき\(a,\) \(1\leqq a\)のとき\(\dfrac{1}{a}\)

4. 二重根号

目次

根号の中に根号が含まれているものを二重根号といいます。 二重根号の中には根号を外せるものがあり、先程の\(\sqrt{A^2}\)の考え方を利用します。

二重根号の外し方

\(\sqrt{p \pm 2\sqrt{q}}=\sqrt{a}\pm\sqrt{b}\)(複号同順) ただし、\(a+b=p,\) \(ab=q\ (a\geqq b)\)

まず、複号同順について説明します。 複号とは\(\pm\)や\(\mp\)のことです。これらが1つの式に複数含まれる場合、 上側同士・下側同士をセットにして読むのが複号同順です。 例えば今回の場合は\(\sqrt{p+2\sqrt{q}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}\)または、\(\sqrt{p-2\sqrt{q}}=\sqrt{a}-\sqrt{b}\)となります。

これに対し、どの組み合わせでもいい場合は複号任意といいます。 複号任意が使われている例が気になる人は「1の6乗根(準備中)」に登場するので見てみてください。

次に、\(\sqrt{q}\)の前の2についてです。 毎回綺麗に2が付いているとは限りません。その場合はまず2が付く形に直します。 直し方は例題で確認します。

そして、なぜこの式が成り立つのか説明します。 \(a+b=p,\) \(ab=q\)を満たす2数\(a,\ b\)が見つかれば、 \(\sqrt{p \pm 2\sqrt{q}}=\sqrt{(\sqrt{a}\pm\sqrt{b})^2}\)と変形することができます。 このとき\(\sqrt{A^2}\)の形になっているので、\(|\sqrt{a}\pm\sqrt{b}|\)となります。 \(a\geqq b\)はこの絶対値の中身が常に正になるための条件で、こう決めておくことで毎回絶対値をそのまま外せます。

最後に足して\(p\)、かけて\(q\)になる2数\(a,\ b\)の見つけ方です。 詳しくは解と係数の関係について解説した「解と係数の関係(準備中)」で説明しています。 結論だけお伝えすると、\(x\)についての二次方程式\(x^2-px+q=0\)の解が\(a,\ b\)になります。 解が無理数になったり、存在しなかったりする場合は二重根号を外せません。 つまり解の公式のルートの中身の部分、\(p^2-4q\)が平方数の場合のみ二重根号を外せます

例題4 二重根号の処理
目次

次の式の二重根号を外して簡単にしてください。

  1. \(\sqrt{7-2\sqrt{10}}\)
  2. \(\sqrt{6-\sqrt{17+12\sqrt{2}}}\)
  3. \(\sqrt{10-5\sqrt{3}}\)

※各解説・解答からこの例題に戻れます

例題4の(1)の解説
例題4

足して7、かけて10になる2数を探して公式を使います。\(a\geqq b\)に注意しましょう。

\(\sqrt{7-2\sqrt{10}}=\sqrt{5}-\sqrt{2}\)

例題4の(2)の解説
例題4

根号が三重になっていますが、内側から順番に考えます。 ところで今回は公式の"2"の部分が見当たりません。 2が付く形に直す1つ目の方法は\(\sqrt{a^2b}=a\sqrt{b}\)を使います。 今回の問題で大活躍します。

\begin{align} &\sqrt{6-\sqrt{17+12\sqrt{2}}}\\[0.7em] =&\sqrt{6-\sqrt{17+2\sqrt{72}}}\\[0.7em] =&\sqrt{6-\sqrt{(\sqrt{9}+\sqrt{8})^2}}\\[0.7em] =&\sqrt{6-(3+\sqrt{8})}\\[0.7em] =&\sqrt{3-\sqrt{8}}\\[0.7em] =&\sqrt{3-2\sqrt{2}}\\[0.7em] =&\sqrt{2}-1\\[0.7em] \end{align}

1回目は\(2・6\sqrt{2}=2\sqrt{6^2・2}\)、2回目は\(\sqrt{2^2・2}=2\sqrt{2}\)を使っています。

例題4の(3)の解説
例題4

今回もまず2を作り出さなければなりません。 しかし、\(\sqrt{a^2b}=a\sqrt{b}\)を使っても2が作れそうにありません。 そこで2つ目の方法として、分母・分子に\(\sqrt{2}\)をかけます。今回の場合は(分母)=1と捉えましょう。 「簡単にしてください」とあるので有理化もお忘れなく。

\begin{align} &\sqrt{10-5\sqrt{3}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{20-10\sqrt{3}}}{\sqrt{2}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{20-2\sqrt{75}}}{\sqrt{2}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{15}-\sqrt{5}}{\sqrt{2}}\\[0.7em] =&\dfrac{\sqrt{30}-\sqrt{10}}{2}\\[0.7em] \end{align}

例題4の解答
例題4
  1. \(\sqrt{5}-\sqrt{2}\)
  2. \(\sqrt{2}-1\)
  3. \(\dfrac{\sqrt{30}-\sqrt{10}}{2}\)

5. まとめ

目次

今回の内容をまとめると、

  1. 分数から循環小数は割り算、循環小数から分数は\(\times10^{(繰り返しの桁数)}\)をして引き算することで繰り返し部分を消去。
  2. 分母の有理化は和と差の積を使う。
  3. \(\sqrt{A^2}=|A|\) (絶対値をつける!)
  4. \(\sqrt{p+2\sqrt{q}}=\sqrt{a}\pm\sqrt{b}\)(複号同順)ただし、\(a+b=p,\) \(ab=q\ (a\geqq b)\)
  5. 二重根号が外せるのは\(p^2-4q\)が平方数の場合のみ

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